フリーアドレスは時代遅れ?失敗する理由と成功に導く改善策を解説!

近年、多くの企業で導入が進んだフリーアドレスですが、「本当に機能しているのか」「もう時代遅れではないか」といった声が聞かれるようになりました。かつては先進的な働き方の象徴とされたフリーアドレスが、なぜ今、見直されているのでしょうか。
この記事では、フリーアドレスが時代遅れと言われる理由から、導入を成功させるための具体的な改善策、そして新しいオフィスの考え方までをオフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーが詳しく解説します。
自社のオフィス環境を見直すきっかけとして、ぜひご一読ください。
- フリーアドレスは本当に時代遅れなのか?
- フリーアドレスが「時代遅れ」と言われる5つの理由
- それでも企業がフリーアドレスを導入するメリット
- フリーアドレス導入を失敗させないための改善策
- フリーアドレスの進化形「ABW」とは?
などを詳しく解説します。
フリーアドレスは本当に時代遅れなのか?

フリーアドレスが一概に「時代遅れ」と断言できるわけではありません。しかし、働き方が大きく変化した現代において、導入しただけでは機能しづらくなっているのが実情です。導入の背景と現状を正しく理解することが重要です。
「時代遅れ」と言われるようになった背景
フリーアドレスが「時代遅れ」と見なされるようになった大きな要因は、導入が目的化してしまったことにあります。 本来は、部署間の連携強化やスペース効率の向上といった目的を達成するための「手段」であるはずが、フリーアドレスを導入すること自体が「目的」になってしまった企業が少なくありません。
その結果、社員は目的を理解できないまま席の自由だけを強いられ、「ただ自分の席がなくなっただけ」と感じてしまうのです。
リモートワーク普及後のオフィスの役割の変化
コロナ禍を経てリモートワークが普及し、働き方は大きく多様化しました。毎日オフィスに出社することが当たり前ではなくなった今、オフィスの役割そのものが見直されています。単純に仕事をする場所から、家ではできない共同作業を行ったり、偶発的なコミュニケーションを生んだりする「価値ある場所」へと変化しました。
このような状況で、ただ席が自由なだけの中途半端なフリーアドレスでは、社員の新たなニーズに応えきれず、「時代遅れ」という印象を与えてしまいかねません。
フリーアドレスが「時代遅れ」と言われる5つの理由

フリーアドレスの導入が失敗に終わるケースには、共通した理由が存在します。ここでは、現場の社員が実際に感じる不満や課題点を5つの側面に分けて解説します。自社の状況と照らし合わせながら、課題の本質を探ってみましょう。
理由1:コミュニケーションが逆に希薄になる
フリーアドレスは、部署を超えたコミュニケーションの活性化を期待して導入されることが多いです。 しかし、実際には逆効果になるケースが少なくありません。毎日席が違うことで、周囲にいる人が誰だかわからず、かえって話しかけにくくなることがあります。
結果として、用事がある相手をオフィス内で探し回る手間が発生したり、結局チャットツールでのやり取りに終始してしまったりと、意図とは真逆の状況が生まれます。
理由2:チームの一体感が損なわれる
チームや部署のメンバーが毎日違う席に座ることで、帰属意識が薄れ、一体感が損なわれるという課題も指摘されています。 新人や若手社員が先輩に気軽に質問できなかったり、チームリーダーがメンバーの様子を把握しきれなかったりと、チーム単位での業務遂行に支障をきたすケースもあるためです。
結果的に、いつも同じメンバーが近くに固まって座るようになり、フリーアドレスが形骸化する原因にもなります。
理由3:集中できず生産性が低下する
フリーアドレスのオフィスでは、Web会議の声や雑談が気になるなど、集中を妨げる要因が多くなりがちです。さらに自分の席が決まっていないため、「静かに作業できる場所を選びたい」と思っても、すでに先に席が取られていて希望の環境が確保できない、ということも少なくありません。
こうした状況は、 特に集中力が求められる専門職やエンジニアなどにとっては、生産性の低下に直結する深刻な問題です。
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課題の種類
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具体的な内容
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騒音
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周囲の会話、電話、WEB会議の音声などが気になり集中できない。
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視線
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人の往来が激しい通路側の席など、落ち着いて作業できない。
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環境
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空調が合わない、デスクや椅子が体に合わないなど、物理的なストレスを感じる。
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理由4:部下のマネジメントが困難になる
マネジメント層にとっては、部下がどこで何をしているのか把握しにくいという問題があります。 固定席であれば、部下の様子を見て業務の進捗を確認したり、気軽に声をかけて相談に乗ったりすることが容易でした。
しかし、フリーアドレスでは部下の姿が見えないため、勤怠管理や業務進捗の把握が難しくなり、適切な指導やサポートの機会を逃してしまう可能性があります。
理由5:荷物の管理が負担になる
毎日、仕事で使うPCや書類、私物などをロッカーから出して席まで運び、帰宅時にはまた片付けるという作業は、多くの社員にとって想像以上の負担となります。
特に、資料を広げて作業する必要がある職種や、個人の備品が多い社員にとっては大きなストレスです。ロッカーが自席から遠い場合などは、さらに負担が増大します。
それでも企業がフリーアドレスを導入するメリット

多くの課題が指摘される一方で、フリーアドレスがもたらすメリットも確かに存在します。導入目的を明確にし、適切に運用することで、企業と社員の双方に良い効果をもたらすことが可能です。
オフィスのスペース効率向上とコスト削減
フリーアドレスの最も分かりやすいメリットは、オフィスコストの削減です。 社員全員分の固定席を用意する必要がなくなり、出社率に合わせて座席数を最適化できます。
これにより、余分なオフィススペースを削減し、賃料や光熱費などのコストを抑えることが可能です。人事異動や組織変更の際に、大掛かりなレイアウト変更が不要になる点も利点と言えるでしょう。
部署の垣根を越えたコミュニケーションの活性化
意図した設計と運用がなされれば、フリーアドレスは部署や役職の垣根を越えた偶発的なコミュニケーション、いわゆる「セレンディピティ」を生み出すきっかけとなります。
普段は関わりの少ない社員と隣り合わせになることで新たなアイデアが生まれたり、部門間の連携がスムーズになったりする効果が期待できます。
自律的な働き方とペーパーレス化の促進
固定席を持たないことは、社員が自律的に働く意識を高めるきっかけにもなります。その日の業務内容に合わせて最適な場所を自ら選んで働くという行動は、主体性を育みます。
また、個人で保管できる資料が限られるため、必然的に書類の電子化、つまりペーパーレス化が進むでしょう。これにより、情報共有の迅速化やセキュリティ向上にも繋がります。
<フリーアドレスについて詳細を見る>
→ フリーアドレスとは?オフィスに導入するとどんな働き方になる?事例とアンケート結果も紹介
フリーアドレス導入を失敗させないための改善策

フリーアドレスを「時代遅れ」で終わらせないためには、導入時の設計と継続的な改善が不可欠です。ここでは、失敗を防ぎ、フリーアドレスのメリットを最大限に引き出すための具体的な改善策を紹介します。
導入目的を明確にして社内で共有する
最も重要なことは、「なぜフリーアドレスを導入するのか」という目的を経営層から社員まで全員が明確に理解し、共有することです。
「コスト削減のため」「部門間連携の強化のため」など、具体的な目的を提示し、社員の納得感を得ることが成功の第一歩です。目的が曖昧なままでは、社員はただ不便を強いられるだけの制度だと感じてしまい、協力は得られません。
業務内容に合わせたゾーニングを行う

全ての業務が一つの環境で快適に行えるわけではありません。オフィスをエリア分けする「ゾーニング」の考え方が極めて重要です。 例えば、以下のようなエリアを設けることが考えられます。
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エリアの種類
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目的と特徴
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集中エリア
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私語厳禁で、個人が集中して作業に取り組むためのスペース。
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コラボレーションエリア
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チームでのディスカッションや活発な意見交換を促すためのスペース。
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WEB会議ブース
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周囲に気兼ねなくWEB会議に参加できる個室ブース。
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リフレッシュエリア
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休憩や雑談ができるカフェのような空間。
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このように、業務内容に応じて働く場所を選べるようにすることで、生産性と満足度の両方を高めることができます。
対象部署や従業員の特性を考慮する
全部門に一律でフリーアドレスを導入するのではなく、職種の特性を考慮して対象範囲を決めることが成功の鍵です。
例えば、営業職や企画職のように社外での活動が多く、自席にいる時間が短い部署はフリーアドレスに向いていますが、経理や人事のように機密情報や紙の書類を多く扱う部署は、固定席の方が効率的な場合があります。
座席予約などのITツールを積極的に活用する
ITツールを活用することで、フリーアドレスの多くの課題は解決可能です。 例えば、座席予約システムを導入すれば、「出社したのに座る席がない」という事態を防げます。
また、誰がどこに座っているか可視化するツールを使えば、マネジメント層が部下を探したり、社員同士がスムーズに連携したりする助けになります。
ペーパーレス化と収納スペースを確保する

荷物の管理負担を軽減するためには、個人ロッカーの設置が必須です。その上で、全社的にペーパーレス化を推進し、そもそも持ち運ぶ書類を減らす努力が求められます。
ロッカーは、単に荷物をしまう場所ではなく、社員一人ひとりの基地として機能するよう、アクセスしやすい場所に適切な数を配置することが重要です。
社員の意見を取り入れる仕組みを作る
オフィス環境は一度作って終わりではありません。実際に利用する社員の意見を定期的にヒアリングし、改善を続けていく姿勢が不可欠です。
アンケート調査や意見交換会などを実施し、上がってきた課題に対して迅速に対応することで、より使いやすく、効果的なオフィス環境を維持することができます。
フリーアドレスの進化形「ABW」とは?

フリーアドレスの課題を乗り越えるための一つの答えとして、「ABW(Activity Based Working)」という考え方が注目されています。これはフリーアドレスをさらに進化させた、より柔軟な働き方です。
ABWの基本的な考え方
ABWとは、「仕事内容(Activity)に合わせて、働く時間と場所を自律的に選ぶ働き方」です。集中作業、共同作業、WEB会議、休憩など、その時々の活動に最も適した環境を、オフィス内外を問わずにワーカー自身が選択します。フリーアドレスがオフィス内の「席」の自由だったのに対し、ABWは「働き方」そのものの自由度を高める考え方です。
フリーアドレスとの決定的な違い
フリーアドレスとABWの最大の違いは、その目的にあります。フリーアドレスが主に「省スペース化」や「コミュニケーション活性化」といった会社側の視点で導入されることが多いのに対し、ABWは「ワーカーの生産性と満足度の最大化」を主目的としています。
ABWを実現するためには、ゾーニングされた多様なオフィス環境はもちろんのこと、自宅やサテライトオフィスなど、オフィス外の選択肢も整備が必要です。
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項目
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フリーアドレス
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ABW(Activity Based Working)
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主目的
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省スペース、コスト削減、コミュニケーション活性化
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ワーカーの生産性・満足度向上
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場所の選択肢
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オフィス内の決められたエリア
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オフィス内外を問わず、業務に最適な場所
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考え方の中心
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会社・組織
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働く個人(ワーカー)
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まとめ
以上、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーの視点から、
- フリーアドレスは本当に時代遅れなのか?
- フリーアドレスが「時代遅れ」と言われる5つの理由
- それでも企業がフリーアドレスを導入するメリット
- フリーアドレス導入を失敗させないための改善策
- フリーアドレスの進化形「ABW」とは?
について、解説しました。
「フリーアドレスは時代遅れ」という言葉は、安易な導入によって形骸化してしまった多くの事例を背景に生まれてきました。しかし、その本質的なメリットが失われたわけではありません。重要なのは、導入目的を明確にし、社員の働き方に合わせてオフィス環境を設計・改善し続けることです。
本記事で紹介した失敗の理由や改善策を参考に、自社の現状を見直し、フリーアドレスの利点を最大限に引き出すのか、あるいはABWのような新たなステージに進むのかを検討することが、今後のオフィス戦略の鍵となるでしょう。社員一人ひとりが快適で生産的に働ける環境を整えるための、最適な答えを見つけ出してください。