オフィス移転で使える補助金・助成金一覧!申請の流れや対象経費を分かりやすく解説

オフィスの移転には、新しい物件の契約費用や内装工事、引越し費用など、多額のコストが発生します。これらの経済的負担を少しでも軽減するために、国や自治体が提供する補助金・助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
本記事では、オフィス移転に関連して活用できる補助金・助成金の種類から、申請の流れ、注意点まで、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーが分かりやすく解説します。
- オフィス移転で補助金は活用できる?
- 【国】オフィス移転に関連する代表的な補助金・助成金
- 【自治体】オフィス移転で活用できる補助金・助成金の例
- 補助金の対象となる主な経費
- オフィス移転で補助金を利用する際の基本的な流れ
- オフィス移転の補助金申請で失敗しないための注意点
オフィス移転で補助金は活用できる?

オフィス移転を計画する際に、多くの方が「移転費用に補助金は使えるのだろうか」と疑問に思うかもしれません。結論から言うと、移転そのものを直接の対象とする補助金は多くありませんが、移転に伴う設備投資や働き方改革の取り組みに対して活用できる制度は数多く存在します。
まずは、補助金と助成金の違いや、基本的な考え方について理解を深めましょう。
補助金と助成金の違いとは
補助金と助成金は、どちらも国や地方公共団体から支給される返済不要の資金ですが、その性質には違いがあります。助成金は、主に厚生労働省が管轄し、雇用促進や労働環境の改善などを目的としており、要件を満たせば基本的に受給できる可能性が高いのが特徴です。
一方、補助金は、主に経済産業省や各自治体が管轄し、新規事業や設備投資の促進など政策目標の達成を目的としています。こちらは公募制で、申請内容が審査され、採択される必要があります。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
| 主な管轄 | 経済産業省、地方自治体など | 厚生労働省 |
| 目的 | 政策目標の達成(事業拡大、設備投資支援など) | 雇用の安定、労働環境の改善など |
| 受給の難易度 | 審査があり、採択・不採択が決まる(比較的高い) | 要件を満たせば受給できる可能性が高い |
| 公募期間 | 短期間で、予算上限に達し次第終了する場合が多い | 通年で募集している場合が多い |
移転費用そのものが対象の補助金は少ない
注意点として、オフィスの「引越し費用」や「新しいオフィスの敷金・礼金」といった移転そのものにかかる直接的な費用を対象とした補助金は、ほとんどありません。
多くの補助金・助成金は、オフィス移転をきっかけとした「生産性向上に繋がる設備投資」や「テレワーク導入などの働き方改革」、「新たな事業展開」といった取り組みに対して経費の一部を補助するものです。そのため、移転計画とあわせて、どのような付加価値を生み出す取り組みを行うかを考えることが重要になります。
【国】オフィス移転に関連する代表的な補助金・助成金

国が主体となって実施している補助金・助成金は、全国の事業者が対象となるため、まずはこちらの活用を検討するのが良いでしょう。オフィス移転の目的や移転に伴って実施する取り組みによって、活用できる制度が異なります。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、中小企業が新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する制度です。
オフィス移転が、事業再構築計画の一環として必要不可欠である場合、建物の改修費や機械装置費などが補助対象となる可能性があります。
| 対象者 | 中小企業等 |
| 補助上限額 | 従業員規模や申請枠により異なる(例:成長枠 7,000万円) |
| 補助率 | 1/2(中小企業)、1/3(中堅企業)など |
| 対象経費 | 建物費(改修)、機械装置・システム構築費、技術導入費など |
| ポイント | 新しい事業への挑戦など、抜本的な事業計画が求められる |
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。 オフィス移転を機に、新しい会計ソフトや勤怠管理システム、グループウェアなどを導入する場合に活用できます。
IT導入補助金【通常枠】の概要
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
| 補助上限額 | 通常枠:5万円~450万円(業務プロセス数により変動) |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費など |
| ポイント | 登録されたIT導入支援事業者が提供するITツールが対象 |
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員数の少ない小規模事業者を対象とした制度で、販路開拓や生産性向上の取り組みを支援します。 オフィス移転に伴い、新たな顧客層へアプローチするためのウェブサイト改修や、チラシ作成などを行う場合に活用が期待できます。
小規模事業者持続化補助金【通常枠】の概要
|
対象者
|
常時使用する従業員数が20人以下の法人・個人事業主など
|
|
補助上限額 |
50万円(通常枠)
|
|
補助率
|
2/3
|
|
対象経費
|
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費など
|
|
ポイント
|
商工会議所・商工会の支援を受けながら事業計画を作成する必要がある
|
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
この助成金は、良質なテレワークを新規で導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主を支援するものです。オフィス移転をきっかけに、在宅勤務制度やサテライトオフィス勤務制度を新たに整備する場合に活用を検討できます。
人材確保等支援助成金【テレワークコース】の概要
| 対象者 | 中小企業事業主 |
| 支給額 | ・制度導入助成:1企業あたり20万円(固定額) ・目標達成助成:1企業あたり10万円(賃金要件を満たす場合は15万円) |
| 対象経費 | テレワーク用通信機器の導入・運用、就業規則の作成・変更など |
| ポイント | 令和7年4月1日の改正により、事前にテレワーク実施計画を提出し認定を受けることが不要に |
参考:001508908.pdf
参考:人材確保等支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省
【自治体】オフィス移転で活用できる補助金・助成金の例

国だけでなく、各都道府県や市区町村も独自の補助金・助成金制度を設けています。特に、企業誘致や地域経済の活性化に力を入れている自治体では、手厚い支援が用意されていることがあります。
東京都のテレワークトータルサポート助成金
東京都では、都内の中小企業等を対象に、テレワークの導入に必要な機器やソフトウェアなどの経費を助成する「テレワークトータルサポート助成金」を令和7年度(2025年度)から新たに実施しています。オフィス移転を機に、従業員が働きやすいテレワーク環境を整備する際に活用できる代表的な制度です。
| 対象者 | 都内に本社または事業所を置く 常時雇用する労働者が2名以上999名以下の中小企業等 |
| 助成額 | 最大250万円 |
| 助成率 | 労働者数30人以上999人以下:1/2 労働者数2人以上30人未満:2/3 |
| 対象経費 | パソコン、タブレット、VPNルーター等の購入費、 クラウドサービスの利用料など |
| ポイント | 無料の専門家相談サービスやセミナーとセットで 総合的なテレワーク支援を提供 |
自治体独自の補助金の探し方
自社が移転を検討している地域の補助金制度を調べるには、以下の方法が有効です。まず、移転先の都道府県や市区町村のウェブサイトで「企業立地」「商工振興」「補助金」といったキーワードで検索します。
また、中小企業基盤整備機構が運営するポータルサイト「J-Net21」の「支援情報ヘッドライン」なども、全国の公的支援情報を探すのに役立ちます。移転先の自治体の担当窓口に直接問い合わせてみるのも良いでしょう。
| 検索方法 | ポイント |
| 自治体のウェブサイト | 「○○市 補助金 オフィス」「○○県 企業誘致」などで検索する |
| 公的機関のポータルサイト | 「J-Net21」などで全国の情報を横断的に検索できる |
| 担当窓口への問い合わせ | 最新の情報や、ウェブサイトに掲載されていない情報を得られる可能性がある |
補助金の対象となる主な経費

補助金・助成金でどのような費用がカバーされるのかを事前に把握しておくことは、資金計画を立てる上で非常に重要です。制度によって対象経費は異なりますが、一般的に以下のような費用が対象となることが多いです。
| 対象になりやすい経費 | 対象になりにくい経費 |
| 機械装置・システム構築費 | 賃料・敷金・礼金 |
| 技術導入費・専門家経費 | 引越し費用 |
| クラウドサービス利用費 | 不動産購入費 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 汎用性の高い備品購入費(PCなど) |
内装工事費や設備導入費
オフィス移転に伴う生産性向上や事業拡大を目的とした内装工事費や、新しい機械装置、業務用ソフトウェアの導入費用などが対象となる場合があります。特に、事業再構築補助金やものづくり補助金など、大規模な設備投資を支援する制度で認められることが多いです。
ただし、汎用性が高く他の目的にも使用できるもの(例:パソコン、スマートフォン)は対象外となる場合もあるため、公募要領をよく確認する必要があります。
ITツール導入やシステム構築費
IT導入補助金に代表されるように、業務効率化を目的とした会計ソフト、勤怠管理システム、グループウェアなどのITツールの導入費用は、多くの補助金で対象経費とされています。 これには、ソフトウェアの購入費用だけでなく、クラウドサービスの利用料や、導入支援コンサルティングの費用が含まれることもあります。
賃料や敷金は対象外が多い
残念ながら、新しいオフィスの賃料、敷金、礼金、仲介手数料といった不動産関連の費用は、ほとんどの補助金・助成金で対象外とされています。補助金は、あくまで事業価値を高めるための投資を支援するものであり、事業活動の基本的な運営費とは区別されるためです。
オフィス移転で補助金を利用する際の基本的な流れ

補助金・助成金を活用するには、定められた手順に沿って申請を進める必要があります。ここでは、一般的な申請から受給までの流れを解説します。実際の流れは制度によって異なるため、必ず各制度の公募要領を確認してください。
| ステップ | 内容 |
| 情報収集・申請準備 | 自社に合う補助金を探し、公募要領を熟読する。事業計画を策定する。 |
| 申請 | 必要書類を揃え、定められた期間内に電子申請などを行う。 |
| 審査・交付決定 | 事務局による審査を経て採択が決定。その後、交付申請を行い交付決定通知を受領。 |
| 事業実施 | 交付決定後に、計画していた事業の契約や支払いを行う。 |
| 実績報告・受給 | 事業完了後、実績報告書と証拠書類を提出。検査を経て補助金が振り込まれる。 |
手順1:情報収集と公募要領の確認
まずは、自社の事業計画や移転の目的に合った補助金・助成金を探すことから始めます。公募が開始されたら、ウェブサイトから「公募要領」をダウンロードし、目的、対象者、対象経費、申請要件、スケジュールなどを詳細に確認します。不明点があれば、事務局の問い合わせ窓口に確認しましょう。
手順2:事業計画の策定と申請
公募要領の内容に基づき、事業計画書や申請書を作成します。なぜオフィス移転が必要で、その移転を通じてどのように事業を成長させるのか、補助金を活用してどのような投資を行うのかなどを、審査員に伝わるように具体的に記述する必要があります。
必要書類をすべて揃え、電子申請システムなどを通じて申請期間内に提出します。
手順3:交付決定と事業の実施
申請内容が審査され、無事に採択されると「採択通知」が届きます。その後、補助金の交付額を正式に決定するための「交付申請」手続きを行い、「交付決定通知」を受け取ります。
この通知を受けてから、初めて事業(契約、発注、支払いなど)を開始できます。交付決定前に開始した事業は補助対象外となるため、注意が必要です。
手順4:実績報告と補助金の受給
計画していた事業がすべて完了したら、事務局に「実績報告書」を提出します。 この報告書には、事業内容の詳細や経費の支払いを証明する書類(契約書、請求書、領収書など)を添付する必要があります。報告書の内容が検査され、補助金額が最終的に確定した後、指定した銀行口座に補助金が振り込まれます。
→ チェックリスト付き!総務のオフィス移転タスクを進めるコツは?手間のかかるタスクや漏れやすいタスクも解説
オフィス移転の補助金申請で失敗しないための注意点

補助金は魅力的な制度ですが、申請にはいくつかの注意点があります。これらを知らないと、せっかくの機会を逃してしまったり、トラブルになったりする可能性があります。
| 注意点 | 対策 |
| 交付決定前の事業開始はNG | 補助金のスケジュールを最優先し、交付決定前に契約・発注しない。 |
| 公募期間が短い | 常に最新情報をチェックし、公募開始後すぐに動けるよう準備しておく。 |
| 資金は後払い | 経費の支払いを自己資金で賄えるよう、事前に資金繰りの計画を立てておく。 |
契約や支払いの前に申請が必要
最も重要な注意点の一つが、補助金申請のタイミングです。ほとんどの補助金では、補助金の「交付決定」通知を受け取る前に契約や発注、支払いを行った経費は、補助の対象外となります。
移転スケジュールが先行してしまい、内装工事の契約などを済ませてしまうと、その費用は補助対象として認められません。必ず「交付決定後」に事業を開始するという原則を覚えておきましょう。
公募期間や申請スケジュールを確認する
補助金には、それぞれ公募期間が定められており、その期間は1ヶ月程度と短い場合も少なくありません。 いつでも申請できるわけではないため、補助金のウェブサイトを定期的に確認し、次回の公募スケジュールをあらかじめ把握しておくことが重要です。また、申請には事業計画の策定など時間のかかる準備が必要なため、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
→ オフィス移転のスケジュールと進め方がわかる!担当者がやるべきことを時期別に解説
補助金は後払いが原則である
補助金は、事業を実施し、かかった経費を支払った後に、その一部が支給される「後払い(精算払い)」が原則です。 そのため、事業を実施する段階では、経費の全額を自社で立て替える必要があります。補助金の入金を当てにして資金繰り計画を立てていると、支払いが滞る可能性があります。金融機関からの融資など、必要な資金を確保しておくことが大切です。
まとめ
以上、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーの視点から、
- オフィス移転で補助金は活用できる?
- 【国】オフィス移転に関連する代表的な補助金・助成金
- 【自治体】オフィス移転で活用できる補助金・助成金の例
- 補助金の対象となる主な経費
- オフィス移転で補助金を利用する際の基本的な流れ
- オフィス移転の補助金申請で失敗しないための注意点
について、解説しました。
オフィス移転で活用できる補助金・助成金は、移転そのものではなく、移転をきっかけとした事業再構築や生産性向上、働き方改革などの取り組みを支援するものが中心です。国の制度から自治体独自のものまで多岐にわたるため、自社の計画に合った制度を丁寧に見つけることが重要です。申請には周到な準備とスケジュール管理が不可欠ですが、うまく活用すれば移転コストを大幅に軽減できる可能性があります。