オフィスの個室はどこにレイアウトするのがよい?図面例や押さえておきたいポイントを紹介

オフィスの個室のレイアウトは、オフィス構築の設計において最初に決めるべき要素です。
担当者さまの中には、「個室を作る場合、どのような個室を作ればよいのか」「個室はオフィス内のどこにレイアウトすればよいのか」と悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、オフィスの個室のレイアウトについて、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーが解説します。
について、詳しく解説します。
オフィス内の個室レイアウトを検討する前に把握しておきたいこと

- オフィス内に個室を設ける目的とは?
- オフィス内に個室を設ける際のメリット
- オフィス内に個室を設ける際のデメリットや注意点
上記は、オフィス内の個室レイアウトを検討する前に、把握しておきたいことです。
それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
オフィス内に個室を設ける目的とは?
オフィス内に個室を設ける、もっとも大きな目的は「プライバシーの確保」です。
より具体的には、情報漏洩のリスクを低減するため、音や視線を遮って業務に集中する(生産性を上げる)ために、個室が設けられます。
例えば、
- 社長室
- 経営企画室
- 社内用会議室
- お客さまとの商談室
などが、個室の例です。
なお「個室」と「個室ブース」は、大きく異なるものです。
設計上も、区別して扱います。
広さ・快適性といった面においては、個室が優位です。
しかし、遮音性を確保することに重点を置く場合は、個室ブースでも十分機能します。
オフィス内に個室を設ける際のメリット
- 執務に集中できる
- 遮音性が高い
- 機密性が高い
- 外部からの印象が良くなる
オフィス内に個室を設けるメリットとして、上記のことが挙げられます。
やはり最大のメリットは、個室を使う人が執務に集中でき、会社としての生産性アップが期待できるという点です。
「自社内のミーティングしか行わない」という場合でも、生産性の観点から考えると、個室はあったほうがいいでしょう。
ミーティングの参加者はミーティングに集中することができ、ミーティングに参加しない周囲の人は、ミーティングの話し声によって気が散ることがありません。
また、遮音性が高い・機密性が高いことによって、個人の面談など外に漏れてはいけない話がしやすい点も、メリットとして挙げられます。
さらに従業員によっては、個室を利用することで、うまく気持ちを切り替えられるという人もいるかもしれません。
オフィス内に個室を設ける際のデメリットや注意点

オフィス内に個室を設けるデメリットは、一つには「費用が掛かる」ことです。
製品を設置するだけの「個室ブース」とは異なり、個室を作るためには工事が必要です。
スチールパーティションの施工や、LGS下地+プラスターボードの施工などを行います。
上記工事には、単に個室ブースを置いたり、設置するだけのパーティションで間仕切りをしたりするよりも、費用がかかってしまいます。
また個室を1つ設けるためには、その部屋のための防災・電気・空調等の工事を検討する必要があり、それにも費用がかかります。
設計前の「適性検査」が非常に重要
オフィスにうまく個室を導入するためには、「適正検査」つまり「何人用の部屋が・何部屋いるのか?」などを、設計前にしっかり調査し、慎重に検討する必要があります。
上記の適性検査が甘いと、「10人用の個室を1人で使っている」というような、非常に非効率的な状況が生まれかねません。
その状況を改善するために工事をし直すと、さらに費用や時間がかかってしまいます。
コミュニケーションの課題をどう解決するのか
「個室」と「コミュニケーションの活性化」を両立することは難しく、「個室“以外”の場所でコミュニケーションを取れるような工夫」をするとよいでしょう。
例えば、近年人気の「ファミレス席」を設ける工夫があります。
ファミレス席では、「休憩・食事・リフレッシュ」のほか、「ちょっとしたミーティング」も気軽に行うことができ、会議室で行うよりもフランクなやり取りが期待できます。
<参考コラム>
→ ファミレス席を導入したオフィス事例5選!導入する際のポイントやメリット・デメリットも紹介
個室+自席だけといった環境では、コミュニケーションは低下するかもしれません。
例えば、先述の「ファミレス席」もそうですが、執務室内に数人がさっと集まれるようなミーティングスペースがあると、コミュニケーションは取りやすくなります。
オフィス内に個室をレイアウトする際に押さえておきたい6つのポイント

- どんなタイプの個室をどれだけ用意するべきか?
- フロア内のどこに個室を配置するかの方針は?
- 間仕切りの素材・種類はどうするか?【ガラス・壁・スラブtoスラブ】
- 個室が難しい場合の代替案は?【個室ブースの活用と法規制の緩和】
- 個室の利用効率を高めるための設計・運用ルールとは?
- スムーズにレイアウトを決めるための設計パートナーの選び方は?
上記は、オフィス内に個室をレイアウトする際に押さえておきたい、6つのポイントです。
それぞれのポイントについて、以下で解説します。
1.どんなタイプの個室をどれだけ用意するべきか?
来客頻度や、社内ミーティングの頻度から逆算して、「何名用の個室が何室必要なのか?」を検討します。
基本的に出社率が高い企業や、ミーティングが多い企業では、個室数が多くなりやすいです。
また、伝統を大切にされている昔ながらの企業でも、役員の方々全員の個室があったり、専用の役員フロアがあったりと、比較的個室が多い傾向があります。
さらに近年の傾向としても、オンラインミーティングが一般化したことで、業種・職種を問わずミーティングの数が増えており、社内の人数に対して個室の数は多くなっています。
なお個室が多い場合は、ウェイティングスペースやお茶を用意するようなスペースも必要です。
一方で、「社内ミーティングを極力減らそう」「ミーティング時間を短くするためにスタンディングで行おう(声が聞こえてもいいのでオープンで行う)」といった試みをしている企業もあり、そのようなオフィスでは個室は少ない傾向です。
あるいは、より柔軟にレイアウトが可能な「個室ブース」を用意することも有効です。
どのように個室に面積を割くのか?
テナントビルの場合、賃料を抑えるために、“最低限”必要な床面積のフロアを借りる企業が多い傾向です。
上記の場合、まずはその床面積に対して、必須である執務席数を確保します。
執務席数は、オフィスに所属する従業員数に「出社率」を掛けて算出します。
現在、出社率は「70%以上」で想定する企業が多いです。
執務席数を確保した後、残りのスペースを個室に割り当てることができます。
オフィスに個室を導入するべきかどうかの判断軸は、「来客数」と「社内ミーティング数」
オフィスの個室は、「必要だから作る(増やす)」という判断が、一般的です。
先述したように、「来客数」と「社内ミーティング数」から、必要な個室の数を算出します。
例えば、来客頻度が高いオフィスなのに、個室の数が少なすぎると、スムーズに来客を受け入れられなくなってしまいます。
そしてこのことは、企業の生産性の低下に繋がります。
まずは「来客用の個室がいくつ必要なのか?」というところから、設計に落とし込むとよいでしょう。
2.フロア内のどこに個室を配置するかの方針は?

ワンフロア500坪のオフィスの場合を仮定して、フロア内のどこに個室を配置するとよいのか解説していきます。
「来客用会議室」をエレベーターから近い場所に配置
まず、「来客用会議室」をエレベーターから近い場所に配置します(エレベーターは通常、ビルの中央付近に配置されています)。
エレベーターに近い場所にオフィスのエントランスを設けて、さらに会議室を入口の近くに配置すると、「お客さまがたくさん歩かなくて済むように」という配慮になります。
そして、フロアでもっとも眺望のよい・居心地のよいスペースは、従業員の共用スペース(社内用会議室・休憩スペースなど)として利用します。
「来客用会議室」を眺望のよい場所に配置するのもよい
フロアでもっとも眺望のよい場所を、お客さまのために使うパターンもあります。
ビル中央付近にあるエレベーターから、オフィスの窓辺の会議室まで、お客さまには少し歩いていただくことになります。
お客さまには、「こんなに景色のよい場所にある立派な会社なんですね」と、好印象を持っていただくことができます。
取引先の方だけでなく、面接に来られた方についても良い印象を持たれるでしょう。
「社長室」をどこに配置するのかは、社長の考え方による
「社長室」については、社長の考え方によって、どこにレイアウトするのか大きく異なります。
「気に入った景色を社長室に取り入れたい」という考え方から、特定の場所を希望される場合もあるでしょう。
また、「社員となるべく顔を合わせたい」という考え方では、オフィス内を歩いてもっとも遠い場所に、社長室を配置することもあります。
<参考コラム>
→ 社長室のレイアウトで検討する11のポイント!ゾーニングから社長室内の家具選びまで
「社内用のミーティングスペース」は執務室から近い場所に配置
「社内用のミーティングスペース」は、執務室から近い場所にレイアウトすることが多いです。
執務室から近いほうが、動線が短いために、ミーティングスペースとして活用されやすいためです。
近年は、フロアの1か所にミーティングスペースをまとめるのではなく、部署ごとに複数配置する考え方も増えつつあります。
3.間仕切りの素材・種類はどうするか?【ガラス・壁・スラブtoスラブ】
個室は面積が限られています。
そのため間仕切りは、素材が「ガラス」であるほうが閉塞感が低減されるため、近年の傾向としてはガラス張りの個室が多いです。
上記の場合、フィルムなどで視線を遮ることも少なく、企業の透明性を表現する意図を持たせることができます。
一方、外からパソコン・モニターに映る内容を他の人に見られるとよくない場合や、個室内に誰がいるのかわからないようにしたい場合などに、ガラス面にフィルムを張って視線を遮るケースもあります。
個室の遮音性を最優先にする場合は、壁を設けるほうが遮音性が上がるため、壁を立て、一部をガラス張りにするという方法もあります。
なお、床や天井・通気口から音が伝わることによっても、音漏れは発生します。
そこで、フロアの床下の「コンクリートスラブ」から、上の階の「コンクリートスラブ」を繋ぐような壁を立てて、音漏れを最小限に抑える方法を「スラブtoスラブ」といい、音漏れの対策に有効な方法です。
4.個室が難しい場合の代替案は?【個室ブースの活用と法規制の緩和】

コストや床面積の問題、および将来的なレイアウト変更や移転をふまえ、個室を作ることが難しい場合は、個室ブースが選択肢に入ります。
これまで個室ブースは、消防見解により「1部屋床面積は3㎡以下」と制限されていましたが、現在は「6㎡以下」に緩和されています。
上記によって、1人用・2人用の個室ブースだけでなく、4人用・6人用といった規模の個室ブースを設置することも可能になりました。(※管轄する消防により見解が異なる場合があります。)
5.個室の利用効率を高めるための設計・運用ルールとは?
オフィスの設計時
オフィスを移転する場合は、今の環境の課題をしっかりと抽出し、それを活かして設計を行うことが大切です。
そうすることで個室が余ってしまったり、足りなくなってしまったりする事態を防ぎます。
企業の規模にもよりますが、10人部屋のような大きな個室だけで構成するのではなく、6人部屋・4人部屋と、様々なサイズの個室があると使い勝手がよいケースが多いです。
なお一般的に、ミーティングの参加者数は「4人」であることが多く、個室のニーズも4人用・6人用が多い傾向です。
来客向けに個室を用意して、社内向けは個室ではなく、先述した個室ブースで対応する考え方もあります。
オフィスの完成後
オフィスが完成した後は、個室を利用するための予約制度・スケジューリングをしっかりと構築することが大切です。
個室用の予約管理システムを利用するなどして、
- 空予約をいかになくすか
(利用開始時間から利用されない状態が10分間経過すると、予約が取り消されるようなシステムがある) - 不必要に大きな個室を使わないようにするか
を管理しましょう。
「なるべく使われない時間を減らす」という観点が、個室の有効利用に繋がります。
6.スムーズにレイアウトを決めるための設計パートナーの選び方は?
オフィス構築を進めるにあたり、最初に決める内容は、今回のテーマである「個室」です。
オフィスビルに入る場合は、「B工事」を行うことが多く、間仕切りラインによって防災設備・空調設備・電気設備を決めることになるため、個室がどこか決まらないと、その他の部分の設計が進められません。
B工事とは、テナントとして入居する際に、建物のオーナーが指定した業者によって行われる工事で、費用はテナントが負担する工事のことです。
対象範囲はビルのルールによって異なりますが、
- 空調設備
- 電気設備工事
- 防災設備
- 建築内装工事
などが該当します。
個室のレイアウトを、慎重かつなるべく早く決めることができるパートナーとして、しっかりとした課題抽出・課題解決ができるパートナーを選ぶことが理想的です。
もちろん、デザイン力もあれば、それに越したことはありません。
当社オリバーは、オフィスづくりの経験が豊富で、課題抽出から解決までしっかりと行い、美しいオフィスづくりを実施できる設計パートナーです。
オリバーオフィスの個室レイアウト事例3選
- 東京日本橋オフィス
- 名古屋オフィス
- 福岡オフィス
以下では、当社オリバーのオフィスの個室レイアウトを3つ紹介します。
1.東京日本橋オフィス

- 社員数:90人
- 平米数:300坪(990㎡)
- 総席数:167席(会議室など含む)
- 部屋数:会議室4室・個室ブース5台・社長室・役員室・ストックヤード2室

元々既存エリアにて、10名用会議室・6名用会議室・個室ブース・セミクローズブースを設け、目的や人数に応じた活用ができるようにしていました。
新区画でも同様の考えで、10名用会議室・6名用会議室を増設しました。
お客さまに来社いただいた際、入口から入ってそのまま会議室に案内しやすい位置に配置しています。
またここ数年は、社内ミーティングの頻度が増えたことから、気軽に利用できるファミレスベンチ型のミーティングコーナーを執務エリアの中心に設置しています。

さらに20名程度での役員会議や、大人数での勉強会も増えたため、会議室2室をスライディングウォールで区切り、20名利用もできるようにしています。

そして、新区画の入口付近やマテリアルライブラリーのそばに大きなハイテーブルを設置し、マテリアルを見ながらの相談や打ち合わせ、ちょっとした立ち話もしやすいようなコーナーを設けています。

2.名古屋オフィス

- 社員数:55人(設計当初で現在は増加)
- 平米数:181.5坪(600㎡)
- 総席数:127席(会議室など含む)
- 部屋数:会議室3室(10人+6人+プロジェクトルーム)・個室ブース 1人用2台・ 4人用1台・ストックヤード2室

旧名古屋オフィスは部署ごとにフロアが分かれており、最大の課題は、多層階構造による他部署間のコミュニケーション不足でした。
移転によりすべての部署がワンフロアに集約され、全体でフリーアドレスを導入しました。
オフィス全体は緩やかに流れる川のように、有機的かつ流動的なゾーニングとし、エリアが重なり合う箇所には、小さなコミュニティスペースを設けることで、気軽な交流を促しています。
内部には大小様々な円形スペースを配置し、「調和」を象徴するとともに、チームの一体感を育む場としています。

これらのスペースは、仕切りすぎないR形状とすることで、プライバシー濃度が低くても集中しやすい環境づくりを実現しています。
完全個室の会議室は2室と最小限に抑え、オープンミーティングスペースなどを豊富に配置したことが特徴です。
また会議室の間仕切壁は、スライディングウォールを採用し、2室→大人数の1室というようにレイアウトを変更するなど、フレキシブルな使い方が可能です。

3.福岡オフィス

- 社員数:19人(設計当初で現在は増加)
- 平米数:78坪(260㎡)
- 総席数:61席(会議室など含む)
- 部屋数:会議室1室・個室ブース 1人用1台

オフィス全体でのレイアウトは、「コミュニケーション」に重きを置いています。

オフィスのどこに座っていても気配がわかる、かつ対面に限らず様々な別角度で様子を伺うことができる空間として、レイアウトの向きを変更しています。

まとめ
以上、オフィス移転・改修を手掛ける株式会社オリバーの視点から、
- オフィス内の個室レイアウトを検討する前に把握しておきたいこと
- オフィス内に個室をレイアウトする際に押さえておきたい6つのポイント
- オリバーオフィスの個室レイアウト事例3選
について解説しました。
個室のレイアウトは、オフィスのレイアウトの中で最初に決めるべき要素です。
今の課題を抽出して解決することに長けた、慎重かつ早く案を提出できる設計パートナーに協力を依頼しましょう。