オフィスのデスク配置の決め方は?配置のパターンや導入における注意点も解説

オフィスのデスク配置には、もっともオーソドックスな「対向型デスクレイアウト」を始めとする、様々なレイアウトがあります。
そして近年は、より新しく柔軟な働き方に対応した、「フリーアドレス型デスクレイアウト」や「ABW型デスクレイアウト」などが増えています。
今回の記事では、「自社にとってどのデスク配置が向いているのか把握したい」、そして「デスク配置を変更したいが、社員からの不満が出ないようにしたい」という企業担当者さまに役立つ情報を、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーが紹介します。
- オフィスの代表的な6つのデスク配置
- 現在主流となっているオフィスのデスク配置
- 自社オフィスに最適なデスク配置を決める方法
- オフィスのデスク配置を変更する際、慎重な検討が必要な理由・注意点
- デスク配置にこだわったオフィス事例3選
について、詳しく解説します。
オフィスの代表的な6つのデスク配置

- 対向型デスクレイアウト
- 同向型デスクレイアウト
- 卍型デスクレイアウト
- リンク型デスクレイアウト
- ベンゼン型デスクレイアウト
- 背面型デスクレイアウト
上記は、オフィスの代表的な6つのデスク配置です。
それぞれのデスクレイアウトについて、以下で解説します。
1.対向型デスクレイアウト

<メリット>
- グループで連帯感が持てる
- 島内でのコミュニケーションが取りやすい
- 最小のスペースで配置でき、面積効率が良い
- 配置によって、部署の構成や上下関係がわかる
<デメリット>
- 集中作業に向かない
- 目新しい感じはしない
「対向型デスクレイアウト」は、多くの企業で採用されているオーソドックスなレイアウトです。
他のレイアウトと比較して、20~50%少ないスペースで同じ量のデスクを配置することができます。
お互いに向き合って座ることで、相談や指示が容易にできるため、グループワークを大切にする業務には特に向いています。
一方で、プライバシーの確保は難しく、集中した作業にはやや不向きです。
上記デメリットを補うために、ローパーティションでデスクの前面・側面を囲う対策があります。
2.同向型デスクレイアウト

<メリット>
- 業務の流れがスムーズで機能的
- 適度なプライバシーとコミュニケーションの両立ができる
- トップダウン型の情報共有がしやすい
<デメリット>
- 管理・監視の色が強い
- 部署内のコミュニケーションが取りづらい
- スペース効率が悪い
「同向型デスクレイアウト」は、連携を必要とする業務において、効率的なレイアウトです。
従業員が来客方向を向くため、お客さまに対する姿勢を見せられることが特徴です。
銀行などの窓口や受付業務のある店舗、コールセンターなどに向いています。
従業員のデスク1~3名程度を1組とし、同一方向に向くように並べ、管理者のデスクは最後列、もしくは横側に配置します。
上記のようにデスクを置くため、管理・監視の色合いを強く感じてしまい、従業員には敬遠される場合があります。
スペース効率では先述の「対向型レイアウト」に劣るため、一般のオフィスでの採用は多くありません。
3.卍型デスクレイアウト

<メリット>
- 目線が合いにくく、ある程度のプライバシーが確保できる
- 隣席とのコミュニケーションが比較的取りやすい
<デメリット>
- スペース効率が悪い
「卍型デスクレイアウト」は、複数人を一組にして、デスクを卍型に配置するレイアウトです。
各々の目線が交差しないことである程度のプライバシーを確保しつつも、隣席の人とすぐにコミュニケーションが取れます。
「プライバシーとコミュニケーションのバランスに優れている」と評価できるでしょう。
ただし、グループ1つあたりでかなり広いスペースを確保しないと配置できず、スペース効率は悪いです。
4.リンク型デスクレイアウト

<メリット>
- 1人あたりの作業スペースが広い
- 隣接していても視線が合いづらい
- コミュニケーションが取りやすい
<デメリット>
- スペース効率が悪い
「リンク型デスクレイアウト」は、「ブーメラン型」とも呼ばれるレイアウトで、120度の角度があるデスク3台で、1つの島を作ります。
1人あたりの作業スペースが広く、複数のモニターを設置できることがメリットです。
ただし先述の「卍型デスクレイアウト」と同様に、グループ1つあたりでかなり広いスペースを確保しないと配置できず、スペース効率は悪いです。
さらに、部門構成の変更などで座席数を増減させる場合の対応が難しいというデメリットもあります。
5.ベンゼン型デスクレイアウト

<メリット>
- 後ろのメンバーとコミュニケーションが取りやすい
- 1人あたりの作業スペースが広い
<デメリット>
- スペース効率がかなり悪い
「ベンゼン型デスクレイアウト」は、Y字型を2組配置することが特徴のレイアウトで、島が増えると亀の甲羅のように見えます。
グループ内のコミュニケーションが取りやすい点や、1人あたりの作業スペースを広く取れる点がメリットで、資料を大きく広げるような業務に特に適します。
一方、他のレイアウトと比較してもかなり広めのスペースが必要です。
6.背面型デスクレイアウト

<メリット>
- 向かい合わせに人がいないため集中しやすい
- 後ろのメンバーとコミュニケーションが取りやすい
<デメリット>
- スペース効率が悪い
- 他のチームメンバーとのコミュニケーションが希薄になる
「背面型デスクレイアウト」は、背中合わせで1チームとするレイアウトです。
後ろのメンバーとコミュニケーションが取りやすく、プロジェクト単位での仕事を進めやすいことが大きなメリットです。
中央にミーティングテーブルを配置するパターンもあり、その場合はコミュニケーションから打ち合わせに至るまで、「チーム間のやり取りのしやすさ」に優れます。
ただ、そのようにチーム間でのコミュニケーションが取りやすい反面、他のチームとは隔たりができてしまいます。
【参考】デスク配置の歴史
現在の形になるまで、デスク配置には様々な歴史がありました。
その一部をご紹介します。
コリドー型:コリドーオフィス
「コリドー」とは、「中廊下」の意味です。
そして「コリドーオフィス」とは、部門ごとに個室を作って、その個室の中に「対向型デスクレイアウト」でデスク配置を行うオフィスのことです。
現在でも古くからある役所などで、採用されていることがあります。
それぞれの課で情報管理がしやすいことがメリットで、横の繋がりが発生しないことがデメリットです。
ブルペン型:ブルペンオフィス
今の「同向型デスクレイアウト」に繋がるのが、「ブルペンオフィス」です。
大きな部屋で学校の教室のように、従業員が同じ方向を向いて、並んで仕事をするスタイルです。
現在でも、コールセンターなどで採用されていることがあります。
同一作業を大勢で行う業務に向いていますが、個人作業・思考が必要な業務には向いていません。
オフィスランドスケープ
「オフィスランドスケープ」は、1960年代のヨーロッパで生まれたオフィスの考え方で、「従業員それぞれが自立して仕事を行う」ことを目指します。
間仕切りを使わずに、オフィス家具・植物・ローパーティションなどを使ってゆるやかに仕切られた、オープンな空間が特徴です。
柔軟にレイアウトを変更できることがメリットで、機密性が高い作業には向かないことがデメリットです。
今のABW(Activity Based Working:仕事の内容や目的に合わせて、働く場所を自由に選択できる働き方)の考え方で作られるオフィスと、よく似ています。
現在主流となっているオフィスのデスク配置

- 対向型デスクレイアウト
- フリーアドレス型デスクレイアウト
- ABW型デスクレイアウト
上記は、現在主流となっているオフィスのデスク配置です。
「対向型デスクレイアウト」は、先述したように4~8人程度が1グループとなって、机を向かい合わせに配置する、島型のオーソドックスなレイアウトです。

フリーアドレス型デスクレイアウト
「フリーアドレス型デスクレイアウト」は、省コスト・省スペースに対応したレイアウトです。個人専用のデスクは設けず、皆でデスクを共有します。
人数分のデスクを用意せず共有にすることで、人員の増減に柔軟に対応することができます。また、コミュニケーションを活性化させることもできます。
減らしたデスクの分だけ生まれたスペースは、「ファミレス席」などの多機能スペースにすることで、有効活用できます。
ABW型デスクレイアウト
「ABW型デスクレイアウト」は、画一的でないフレキシブルなレイアウトです。
ABWは、「Activity Based Working」の略です。“活動(働くシーン)に応じた環境で仕事をするスタイル”を指し、自由な働き方を推奨しています。
オフィス内には執務デスクだけでなく、ミーティングテーブル・ソファ・集中ブースなど、様々な種類の“働く場”が用意され、各個人が自分の業務に合う場所を選択します。
フリーアドレス型とABW型については、以下のコラムに詳しく解説しています。
→ フリーアドレスとは?オフィスに導入するとどんな働き方になる?事例とアンケート結果も紹介
フリーアドレスデスク型やABW型が増えている背景
「フリーアドレス型デスクレイアウト」や「ABW型デスクレイアウト」は、年々増えています。
「働き方改革」が推進されていることや、コロナ禍以降リモートワークが普及しました。
つまり、オフィスにいない人が増えたといえます。
そして、リモートワークの普及によって、会社への帰属意識が薄くなり、エンゲージメントの低下が見られるようになりました。
上記を打開して、従業員に「出社する意義」を持ってもらうために、フリーアドレス型・ABW型のデスクレイアウトは増加しています。
「フリーアドレス型デスクレイアウト」や「ABW型デスクレイアウト」によって生まれたスペースは、ただ余らせるのではなく、“新たな価値を生み出す場所”にしていくべきでしょう。
- 労働人口が減っている
- 労働時間も減っている
人手も時間も少ない状況なので、オフィスの改革により「いかに人材を確保するのか」が重要視されています。
自社オフィスに最適なデスク配置を決める方法

オリバーでは、オフィスに最適なデスク配置を決める以前に、「何をするためにオフィス改装をするのか?」を大切にしています。
- エンゲージメントの上昇
- 採用力のアップ
- 働き方の効率アップ
などが、よくある課題です。
そして、
- 自社が3年後・5年後どうなっていたいか?
- その時、人員はどのようになっているのか?
など、“なりたいビジョン”を掛け合わせて、デスクの配置を提案します。
例えば5年後、従業員数が1.3倍になるとしたら、同じオフィスではスペースが足りなくなるでしょう。
その際に移転が選択肢にない場合は、フリーアドレス型・ABW型のレイアウトを導入して、慣れていく必要があるでしょう。
「デスク配置」は「働き方」とセットで考える必要があるといえます。
今の社内環境について、よく確認する
また、今の社内環境をよく確認する必要もあります。
たとえば、出社率については体感ではなく、実際の出社率をしっかり確認し、「デスクが足りない」もしくは「余る」という状況を避けます。
そのほか、「決済フロー(判子を使うかどうかなど)の確認」や「納品書・請求書を紙で出すかどうかの確認」といったことも行います。
オフィスのデスク配置を変更する際、慎重な検討が必要な理由・注意点

フリーアドレス型デスクレイアウトや、ABW型デスクレイアウトに変更する際には、慎重に検討すべき点や注意すべき点があります。
固定席に慣れた従業員に対する配慮
社歴が長い方の中には、「デスクは自分で管理するものだ」との考えを持っている方がいるかもしれません。
また社歴が浅くても、デスクにお気に入りの物を置いて、居心地が良いようにレイアウトしている方もいます。
フリーアドレス型・ABW型を導入する場合、上記のような固定席はなくなるため、自席に愛着を持っている方にしっかり納得いただくことは、とても大切です。
急な変更は避けて、しっかりとプロセスを踏みましょう。
オフィスはよりよい形に変化を続けていくべきで、移転・改装の後でも変化させてよいものなので、一気に変えることを目指す必要はありません。
自席の荷物をなくす:管理職から始めるのがポイント
フリーアドレス型やABW型のデスクレイアウトでは、デスクが共有になるため、離席時に個人の荷物を置くことはできません。
各自の荷物は、ロッカーなどにしまうことになります。
自席の荷物をなくすことについて、率先して上長が取り組むことで、他の従業員も納得しやすくなります。
スムーズに進められるよう、「固定席をなくすことは、企業経営を考慮したうえでの判断です」と、きちんと伝えましょう。
“形だけのデスク配置変更”が招く問題
「デスク配置をやってみたけど、うまくいかなかった」というケースは、少なくありません。
部門特有の事情や、電話・荷物などの問題が残っている状況で、フリーアドレス型に移行したものの、やはりうまくいかずに固定席に戻すケースが、1つの例です。
固定席に戻す際にデスクが不足する場合は、再度購入してデスクを追加しなくてはいけません。
先に述べたような配慮がないままフリーアドレス型にしても、個々が使う席は固定化されてしまい、フリーアドレスが形骸化します。
繰り返しになりますが、固定席に慣れた従業員に配慮し、自席の荷物をなくす取り組みは管理職から始めることが、デスク配置を変える際に非常に重要です。
また、出社が減っているために面積が狭いオフィスに移転したものの、やはり面積が足りなくなってしまったという話も聞きます。
上記の場合、プラスで小さなオフィスを借りて対処することが多いですが、それでは働きづらいです。
既存のオフィスよりも狭いオフィスに移転するかどうかは、きわめて慎重に決める必要があるでしょう。
デスク配置にこだわったオフィス事例3選
以下では、当社オリバーによる「デスク配置にこだわったオフィス事例」を3つ、ご紹介します。
1.TOHOシネマズ株式会社 様
TOHOシネマズ株式会社 様は、全国で70ヵ所を超える映画館を運営されており、お客さまのご来場数は日本トップシェアの映画興行会社様です。
この度、従業員の増加による執務環境の改善として、「従業員が心身ともに健康に、効率的に働ける環境を整える」ことを目的にオフィスを移転されました。

ABW(Activity Based Working)を推進するため、大きく4パターンの座席をレイアウトし、その日の気分に合わせて自由に座席を選べるフリーアドレス席としました。
その他、社内ミーティングスペース、Webミーティングができる個室のミーティングスペースなど、用途によって使い分けのできるミーティングスペースを増やすことで、業務効率の向上を目指しました。
<事例を詳しく見る>
→ 出社したくなる、映画館のようなオフィス|TOHOシネマズ株式会社 様
2.A社 様
A社 様は、名古屋・栄の中心地で新しいランドマークとなるビルが開業したことを機に、同ビルのオフィスフロアへの入居移転をされました。
“「WorkはArt」働く場所は、創造を生み出すアトリエ”をコンセプトに、機能性とデザイン性を兼ねそろえた家具が選定されています。

基本はデスクをすべて同一方向に向けるブルペン型の配置で、部署間の連携が強化され、新しいアイデアが生まれやすくなっています。
また、執務エリアと休憩エリアを分けることで、仕事と休憩にメリハリをつけ、今までの「ながら休憩」が減り、生産性の向上につながっています。
<事例を詳しく見る>
→ 「壁」を感じないオープンなオフィス|A社 様
3.株式会社働楽ホールディングス 様
株式会社働楽ホールディングス 様は、IT技術を用いて、主に情報インフラシステムの開発やソフトウェアシステムの開発をされています。
2024年9月、業務拡大とオフィス環境の向上による「社員満足度向上・採用強化」を目的として、グループ会社のIT働楽研究所 横浜事業所を移転されました。

ヒトデ型やスネーク型などの異形デスクを取り入れ、集中して働きながらも、コミュニケーションがとりやすいデスクを採用しました。
その他、働楽ホールディングス 様らしい「遊び心」を表現して、卓球台としても利用できるミーティングテーブルやカフェカウンターを設置するなど、最大限にコミュニケーションの図れるエリアを設け、業務もリフレッシュもできる空間を創出しました。
<事例を詳しく見る>
→ 遊び心を大切にし、コミュニケーションを誘発するオフィス|株式会社働楽ホールディングス 様
まとめ
以上、オフィス移転・改修を手がける株式会社オリバーの視点から、
- オフィスの代表的な6つのデスク配置
- 現在主流となっているオフィスのデスク配置
- 自社オフィスに最適なデスク配置を決める方法
- オフィスのデスク配置を変更する際、慎重な検討が必要な理由・注意点
- デスク配置にこだわったオフィス事例3選
について、解説しました。
慎重な検討が必要な場面もありますが、デスクの配置を最適化できれば、オフィスに新たな価値が生まれ、採用力やエンゲージメントの向上が期待できます。
この記事を参考に、デスクの配置がよりよい形になるよう、検討してみてはいかがでしょうか。