オフィスのアートにおすすめな「ウォールアート」の効果と導入の仕方
コロナ禍を経て、リモートワークの利便性に気付き、「できることなら出社せずリモートワークをしたい」と思う従業員が増えている傾向にあります。
リモートワークには、通勤時間が減る・人間関係のストレスが減るといった多くのメリットがありますが、一方で、会社への帰属意識が薄れる・新人の教育に差し支えるといったデメリットもあります。
アフターコロナのオフィスでは、従業員にオフィスに来てもらい、対面でしか取れないコミュニケーションをどう取ってもらうのかが大きな課題であり、その課題を解決するための1つの大切なツールが「アート」です。
なかでも、社内の壁面に描画などを行う「ウォールアート」は、独創性・存在感が強く、「どんな会社を目指すのか?」を表現しやすいツールとして、広く注目されています。
今回の記事は、様々なオフィスにアートを取り入れてきたTokyoDexのクリエイティブディレクターで代表のダニエル・ハリス・ローゼンさんによる、オリバーが開催した講演「オフィスアートの力 ― アートを通じて、行きたくなるオフィスにする秘訣 ―」で紹介された、
- オフィスのアートが社内外にもたらす効果
- オフィスに取り入れるアートの中で特に注目されている「ウォールアート」
- オフィスにウォールアートを導入する流れ
- ウォールアートを導入する際に行う「ワークショップ」自体がコミュニケーションを生む
について、詳しく解説していきます。
講演者のご紹介
ダニエル・ハリス・ローゼン
TokyoDex クリエイティブディレクター / 代表
日本のアート業界において30年以上のキャリアを持つクリエイティブ・ディレクター。
太鼓芸能集団 鼓童のロードマネージャーとして、アートマネジメントを習得。
その後、ハワイ大学の美術&芸術史学科を修了後、2010年多摩美術大学大学院美術研究科を修了(博士号取得)。大学院在学中より輪派絵師団のメンバーとしてアーティスト活動を行う傍ら、NHK、YouTube、MINI、マクドナルド・ジャパンなどのコマーシャル企画を手がける。
同時に自身の現代アート制作にも励み、ホノルル美術館やアートフェア台北での展示などグローバルに活動を展開。
2012年、アートエージェンシーTokyoDexを設立。現在は東京を拠点に活動を行い、企業のビジョンをアートに昇華させるプロジェクトや、ドイツ大使館、経済産業省、慶応義塾大学、Google、GREE、サッポロビールといった幅広い組織へ向けたコンテンツ提案を通じて、アートが持つ可能性を広げている。
オフィスのアートが社内外にもたらす効果
- 「コミュニケーション」の増加
- 「組織ブランディング力」の向上
- 「組織エンゲージメント力」の増加
- 「モチベーション」の上昇
- 「ストレス」の減少
オフィスのアートは、社内外に様々な効果をもたらします。
主な効果について、下記で解説していきます。
1.「コミュニケーション」の増加
オフィスのアートによって、コミュニケーションが増加します。
リモートワークでは実現できない、対面によるコミュニケーションです。
人感センサーを置いて、アート設置前・アート設置後の「人の動き」を測った企業があります。
結果として、アート設置後は、これまで人の流れが少なかったエリアに人が集まるようになり、滞在時間も伸びていることが確認できました。
滞在時間が伸びているということは、そこで何らかのコミュニケーションが生まれていることが推測できます。
アートからくるコミュニケーションは、「結果」を求めるようなシビアなコミュニケーションではなく、「例えばそのアートを好きか? 嫌いか?」といった、答えがなく自由な意見の交換が期待できるコミュニケーションです。
それぞれの従業員が持つ創造性や革新性を邪魔することがありません。
経済産業省でも、ビジョンウォール(壁画)が取り入れられました。ビジョンウォール制作後の従業員アンケートの結果(※)、82%の従業員が「壁画アートがあることによって、コミュニケーションに繋がった」と回答し、35%の従業員が「壁画アートがあることによって、自由な発想に繋がった」と回答しています。
2.「組織ブランディング力」の向上
オフィスのアートによって、組織のブランディング力が向上します。
ブランディング力とは、「商品・サービスの差別化を実現させるための自社価値を築き上げること」、または「自社価値・ブランド化を実現できるスキル」のことを意味します。
ブランディング力と、後述するエンゲージメント力は関連しています。
例えば、「社外に自社の独創性をアピールする意図でアートを検討する(=ブランディング)」ことが、「社内で自社の独創性を再認識し、愛着が湧く(=エンゲージメント)」ことに、繋がることが多くあります。
前述の経済産業省の従業員アンケート(※)では、75%の従業員が「壁画アートについての来客の反応は好意的であった」と回答し、79%の従業員が「今回のような経産省らしさを紹介するような壁画アートを来客に積極的にアピールしたい」と回答しています。
3.「組織エンゲージメント力」の増加
オフィスのアートによって、組織のエンゲージメント力が増加します。
組織エンゲージメントとは、企業と従業員がお互いに信頼しあい、貢献しあう関係性や愛着心のことを指します。
前述の経済産業省の従業員アンケート(※)では、65%の従業員が「壁画アートがあることによってオフィスへの愛着に変化があった」と回答し、63%の従業員が「壁画アートがあることによって、経産省という組織への印象が良くなった」と回答しました。
4.「モチベーション」の上昇
オフィスのアートによって、モチベーションが上昇します。
「(アートがある)こんなカッコいい会社で働けている」もしくは、「自分は特別な会社にいるんだ」というような気持ちによって、仕事に対するモチベーションを上げる効果が期待できます。
とある大学が2,000人以上を対象とした実験では、エンリッチドスペース(ここでは、アートを設置し、感情を豊かにする・向上させるような空間の意味)を持つ企業について、「仕事のモチベーション・効率・全体的な満足度」が、17%向上することが分かっています。
また、前述の経済産業省の従業員アンケート(※)では、65%の従業員が「壁画アートがあることによって、オフィスが働きたい環境になった」と回答し、45%の従業員が「壁画アートがあることによって、仕事に対するやる気に変化があった」と回答しています。
5.「ストレス」の減少
オフィスのアートによって、ストレスが減少します。
とある企業では、オフィスアート設置後の従業員アンケートで、約76%の従業員が「アート作品の設置によって、気分転換・リフレッシュなどの快適さが向上した」と回答しています。
- アートを眺めることで、頭や気分を切り換えられた
- アートを眺めている間は、仕事のことを忘れていた
- ふとした瞬間にアートが視界に入ることで、気分をリフレッシュできた
といった意見が、集まったようです。
また、前述の経済産業省の従業員アンケート(※)でも、84%の従業員が「壁画アートがあることによって、気分転換やリフレッシュに繋がることがあった」と回答しています。
※引用:
経済産業省『令和3年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業に関する報告書(ヴィジュアルアートによる組織活性化調査実証事業)』
オフィスに取り入れるアートの中で特に注目されている「ウォールアート」
オフィスに導入するアートには、絵画や彫刻、花・花瓶など、様々なものがあります。
その中で今回取り上げたいのは、「ウォールアート」です。
ウォールアートはその名のとおり、オフィス室内の壁や、ガラス面に描かれるアートのことです。
アーティストが直接描く、またはプリントしたものを施工して、完成します。
購入したりレンタルしたものを設置すれば完成となる、絵画や彫刻などとは異なり、ウォールアートは“そのオフィスに合わせてインスピレーション”されるため、完成図は決まっていません。
よって、完成までのプロセス(流れ)が、アート導入において非常に重要となります。
次の項目で、ウォールアートを導入する流れについて、詳しく紹介していきます。
オフィスにおすすめのウォールアートを導入する流れ
- ヒアリング
- 起用アーティストの提案
- ラフ案を用いたテーマ決定
- ウォールアートの制作
上記が、オフィスにウォールアートを導入する際に踏む、主なプロセスです。
それぞれのプロセスについて、以下で説明していきます。
1.ヒアリング
ウォールアートの導入に向けた1歩目が、初回のヒアリングです。
- ビジネスの目的
- ビジネスのビジョン
- なぜアートを取り入れたいと思ったのか?
- オフィス空間全体のコンセプト
などを、ヒアリングで明らかにします。
2.起用アーティストの決定
前述のヒアリングを基に、オフィスアートのスタイルやテーマを考え、それを表現することができそうなアーティストを選定します。
フィードバックを幾度か行い、アーティストが確定します。
前述のヒアリングから、起用アーティストの決定までに、1~2ヶ月を要します。
3.ラフ案を用いたテーマ決定
アーティストが確定したら、「何をテーマに作品を描くか?」を検討していきます。
ヒアリングを詰めて決定することもあれば、アーティストのインスピレーションを大事にすることもあります。
そして、ラフ案が作られます。
ラフ案についてもフィードバックを幾度か行い、色調やモチーフなどのOKが出て、いよいよ実際に、現場でウォールアートを制作するフローへと進んでいきます。
ラフ案制作からフィードバック完了までに、1~2ヶ月を要します。
4.ウォールアートの制作
床や家具に傷・汚れがつかないように、保護作業を実施するなど、まずは施工準備があります。
搬入の手配や、画材の準備なども、施工準備に含まれます。
アーティストが最高のパフォーマンスを発揮できるようにしっかりと準備する必要があり、施工準備には1~2週間を要します。
施工準備が完了してから、いよいよウォールアートの制作です。
アーティストの筆の進め方(一気に描き上げるタイプなのか、緻密に筆を進めていくタイプなのか)によって、また壁面の大きさによって、制作期間は大きく左右されます。平均的には、1~2週間というケースが多いです。
ウォールアートを導入する際に行うワークショップ自体がコミュニケーションを生む
ウォールアートを導入するにあたって、社内で有志を募り、ワークショップを行うケースもあります。
開催日を調整したり、ワークショップで出た意見をまとめる必要があるので、前述したプロセスよりも数多くのプロセスを踏むことになります。
プロジェクト期間が1ヶ月ほど延びてしまいますが、ワークショップの開催は非常に意義のあることです。
<ワークショップをする場合のアート完成までの流れ>
- ヒアリング
- アーティスト決定
- アーティストによる、ワークショップの企画・準備
- そのオフィスを利用する社員が参加するワークショップの実施
<ワークショップの内容>
①発想を柔軟にするアートエクササイズ
②チームでディスカッション
③クリエーション
④鑑賞 - アーティストによる、アートラフ案の制作・フィードバック
- アーティストによる施工準備
- アーティストによるアートの制作
- 完成
ワークショップは、ウォールアートを請け負う会社など第三者の進行のもと、行われることが理想的です。
組織のビジョンや理念について話し合い、そこで出たキーワードをスケッチやコラージュなどで表現します。
ワークショップの大きな意義の1つに、「ワークショップ自体がコミュニケーションを生む」ということがあります。
コロナ禍を経て低下したチームコミュニケーションを活性化させるために、ワークショップの実行はとても有効です。
ワークショップの参加者からは、「チームディスカッションなどによって、企業や組織のビジョンを深く理解し、以前よりも会社に対して好感が持てるようになった」という意見を、よく聞きます。
また、スケッチやコラージュの作成は、普段の業務では体験することがない“非日常的”な体験であり、参加者のクリエイティビティーの活性化が期待できます。
ワークショップには、アーティストが参加することもあります。
アーティストにとっても、従業員の雰囲気やアイデアが生まれるプロセスなどを深く理解できる、いい機会なのです。
まとめ
今回は、TokyoDexのクリエイティブディレクターで代表のダニエル・ハリス・ローゼンさんによる講演、「オフィスアートの力 ― アートを通じて、行きたくなるオフィスにする秘訣 ―」で紹介された、
- オフィスのアートが社内外にもたらす効果
- オフィスに取り入れるアートの中で特に注目されている「ウォールアート」
- オフィスにウォールアートを導入する流れ
- ウォールアートを導入する際に行う「ワークショップ」自体がコミュニケーションを生むこと
について、解説しました。
なお、オフィスにアートを取り入れる予算ですが、アートはモノではないので、例えば「1㎡あたり○○円」といった形だけでの提示はできません。
人件費や材料費を中心に費用がかかってくることになりますが、アーティストのスタイルを理解した上で「どれだけの想いを一緒に込められるか?」ということのほうが、はるかに大事になってきます。
事前に予算を決めて、それをオフィス設計を手掛ける業者などに伝えて、「どの範囲まで実現可能か?」を相談することがベターです。
オリバーでは、オフィス移転・改装のプロジェクトを数多く手がけています。
オフィス空間づくりにお困りの際は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
オフィスブランドPLACE2.5では、お客さまのビジョンを実現する、唯一無二のオフィス設計を行っています。
また当社では自社オフィスのオフィス見学を実施しています。
オリバーのオフィスは全て見学していただくことができます。
詳しくは以下のページをご覧ください。