活用されるオフィス休憩スペースのポイントは?計画をスムーズに進めるコツもご紹介
働き方に関心が向く近年、休憩スペースについて「ただスペースだけ用意しておけばよい」という考えではなく、「しっかりと活用される休憩スペースが必要」と考える企業が増えてきました。
実際、オフィスに休憩スペースがあることで労働の生産性がアップし、優秀な人材を確保することに繋がります。
「これからオフィスに休憩スペースを作っていこう」と計画している人のなかには、
- よい休憩スペースに必要な要素を知りたい
- よい休憩スペースが作られると、どんな効果があるのか知りたい
- プロジェクトを円滑に進める方法を知りたい
と考えている方が多いでしょう。
そこで今回は、上記のような情報を集めている方のために、
- なぜオフィスに休憩スペースを作るのか
- オフィスの休憩スペースを検討する際に発生する懸念
- オフィスの休憩スペース3事例
- オフィスの休憩スペースを作る際のポイント5選
- 豆知識:救護室に関する法律「労働安全衛生法」
- オフィスの休憩スペースを業者に依頼する際の注意点
について、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーがまとめました。
オフィスの休憩スペースを作るにあたって、できるだけつまづきがないようにして、結果として従業員によく活用される休憩スペースの完成を目指したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜオフィスに休憩スペースを作るのか
最初に、そもそもなぜオフィスに休憩スペースを作るのか、その理由をご紹介します。
大きな理由に、オフィスの休憩スペースにて、疲れをリフレッシュして業務に戻ってもらうことで、労働の生産性が上がる効果が期待できるということが挙げられます。
また、休憩スペースに複数の従業員が集まった時には、そこでコミュニケーションが生まれます。
時には、自分が所属する部署以外の人がどのように仕事をしているのか、理解を深める機会になります。
このようにコミュニケーションのきっかけづくりになることも挙げられます。
さらに働く人々にとっては、休憩スペースに関して「ないよりはあるほうがいい」と考える人が多いです。
その考えを持つ人の中には、優秀な人材も含まれるので、優秀な人材の確保のためにも、休憩スペースは必要であるといえます。
オフィスの休憩スペースを作るにあたって、経営層の理解をもっと得たい場合、上記のようなメリットを具体的に説明するとよいでしょう。
オフィスの休憩スペースを検討する際に発生する懸念
休憩スペースを作るにあたって発生する、最も大きな懸念点は
- 休憩室は休憩の時にしか使えない
- 休憩以外の時間帯は無駄なスペースになるのでは
という点です。
「休憩する時間以外、何も使いようがないスペースというのは、無駄ではないのか?」という意見は、必ずと言ってもいいほど出てきます。
休憩のためだけではなく、他の用途も兼ねたスペースとして、オフィス全体の設計をすることも大切となります。
次いで、コストの懸念があります。
休憩スペースを作るためのイニシャルコストや、それを維持するためのランニングコスト(家賃など)について、その費用を何のための費用と捉え、どのように捻出していくかがポイントになってくるでしょう。
とはいえ、例えば先述したようにオフィスに休憩スペースがあることをメリットに感じる人がおり、その中に優秀な人材も多いため、雇用の面でも有利に働きます。
また労働の生産性が上がる効果も期待できるため、そういった作用のために必要なコストと捉えることはできるのではないでしょうか。
オフィスの休憩スペース3事例
オリバーでは、様々な業種・規模のオフィスの休憩スペースをデザインしてきました。
その中から、オフィスの休憩スペース事例を3つご紹介します。
- 気持ちの切り替えができる食堂 福井鋲螺株式会社 様|業種:製造業
- 公園のような食堂 ナミックス株式会社 様|業種:製造業
- 思わず入りたくなる遊び心あるエリア 前田建設工業株式会社 様|業種:総合建設
1.気持ちの切り替えができる食堂
福井鋲螺株式会社 様|業種:製造業
忙しい日々の中でも、休憩時間中はしっかりと気持ちを切り替えられるように、ゆっくりと休憩ができ、何気ない会話を楽しむことができる食堂をご提案しました。
既存の工場を新たに食堂として改修したため、食堂全体の内装は工場の雰囲気を生かしています。
コンクリートやスチールなどの工場らしさを感じる素材に加え、気持ちを切り替えるリラックス効果のある素材として、木材やファブリックを複合しました。
また、イベントなどで使用するためのフレキシブルなエリアには、移動させやすいキャスター付きの家具など、多用途で利用できる様々な種類の席を用意しました。
クライアント情報
企業名:福井鋲螺株式会社 様
所在地:福井県あわら市
業種:製造業
面積:200坪(食堂面積)
従業員数:170席(食堂席数)
<詳しくはこちら>
→ 気持ちの切り替えができるリフレッシュに最適な食堂
2.公園のような食堂
ナミックス株式会社 様|業種:製造業
「従来の食堂イメージから脱却し、多目的な食堂空間にしたい」というご要望から、仕事場を離れてリフレッシュできる、公園のような空間として「PARK」をコンセプトとした、気分転換できる空間をご提案いたしました。
食事スペースでは、メンテナンス性に優れた家具を配置することで食堂としての機能を満たしながら、ランチミーティングが行えるエリアやゆっくり過ごせるラウンジエリアを設けるなど、様々なシーンに対応できるようにゾーニングしました。
小上がりを利用したベンチスペースです。
編み家具のスツールで、公園のようなアウトドア感を演出しています。
クライアント情報
企業名:ナミックス株式会社 様
所在地:新潟県新潟市
業種:製造業
面積:約170坪(食堂面積)
従業員数:298席(食堂席数)
<詳しくはこちら>
→ 「PARK」をコンセプトとした、リフレッシュできる空間
3.思わず入りたくなる遊び心あるエリア
前田建設工業株式会社 様|業種:総合建設
前田建設工業様発祥の地である福井県では、恐竜の化石が多く発掘されます。
その「曲線」や「恐竜」というキーワードから、恐竜の卵や曲線を用いた家具で全体を構成しています。
仮眠スペースや足湯がある癒しエリアの他に、思わず触れてみたくなるハンモックやボルダリング、パターゴルフなど、思わず入りたくなるような遊び心ある楽しい空間を提案しました。
朝から夜までの1日の流れを想定し、どのような空間が必要かなどを検討し、空間を構成しました。
食事のできるカフェスタイルやランチ、ミーティングに加えて、昼寝や運動、休憩など様々な使い方ができるしつらえを演出しています。
クライアント情報
企業名:前田建設工業株式会社 様
所在地:茨城県取手市
業種:総合建設
面積:約212坪
従業員数:111名
<詳しくはこちら>
→ 遊び心あふれるリラクゼーションスペース
オフィスの休憩スペースに用意するとよい設備
- コーヒー
- モーニングサービス(朝食サービス)
- オフィスコンビニ
- 図書コーナー
- 軽い運動ができるジム
- シャワー
など様々な設備が挙げられます。
例えばモーニングサービス(朝食サービス)では、野菜がしっかり摂れるなど、単に休憩するだけではなく従業員が自身の健康に意識を向けられるような仕掛けを導入している企業さまもあります。
また、見やすい位置にモニターなどを配置し、自社の情報や業界のニュースなどを配信(=デジタルサイネージ)して、従業員が自社についてより理解したり、世の中の動きを知ったり、それを基にコミュニケーションをしてもらったりすることも、価値のあることです。
逆に情報の海から一旦遮断し、音や光を最小限にしてしっかり休んでもらうことも、1つの方向性です。
例えば、仮眠スペースを設ける企業もあります。
重たい革靴やヒールを脱いで、リラックスできるようなスペースがあってもいいかもしれません。
オフィスの休憩スペースを作る際のポイント5選
オフィスの休憩スペースを作る際のポイントにはさまざまなことが挙げられますが、移転や大規模な改修工事といったタイミングは、休憩スペースを再考するよい機会となります。
移転や改装を検討している企業担当者の方が押さえるべき5つのポイントをご紹介します。
- 休憩スペースを作る目的を最初に考える
- 1日の働き方の中で休憩スペースをどのように利用するかを考える
- オフィスを利用する従業員には、プロジェクトの初期段階から移転・改装の目的を周知する
- どういった空間、どういった家具を配置するのがよいかは、休憩スペースの目的によって大きく異なることを知っておく
- 活用されにくい休憩スペースが生まれてしまう原因を押さえておく
1.休憩スペースを作る目的を最初に考える
先述したように、オフィスの休憩スペースを作るメリットには、労働の生産性のアップや、人材の確保などが挙げられます。
ただしこの効果を十分得るためには、まず休憩スペースを作る目的が、きちんと明確になっていなければいけません。
企業によって、適している休憩の「内容」が違います。
具体的には、1人でゆっくりと落ち着きたい人が多いのか、それとも同じ会社の人と会話をしながらモチベーションを上げていきたい人が多いのか、といったところです。
休憩スペースを作るにあたって、従業員にはしっかりとヒアリングを行い、どのような目的のために休憩スペースを作るのかを明確にしましょう。
なお、移転改装のプロジェクトの一環で休憩スペースを作る場合は、オフィスのコンセプトと連動したものにする必要があります。
プロジェクトの目的(=叶えたいこと)には、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 経営ビジョンの実現
- 企業イメージの向上
- 経営ビジョンや事業指針の社員への浸透
- 戦略的な営業拠点づくり
- IT化に対応する業務効率の向上
- 固定費の削減
- 働き方改革、ワークスタイルの見直し
- 業務内容、人員計画への対応
これらを叶えるための基本とする方針がオフィス全体のコンセプトとなります。
そして、そのオフィス全体のコンセプトに沿った、休憩スペースのあり方(休憩スペースを作る目的)を検討するのです。
オフィス全体のコンセプトの決め方や必要な理由、コンセプトの活かし方については、以下のコラムで詳しくご紹介しています。
→ オフィスづくりに役立つコンセプトとは?具体例とともに必要性、決め方を紹介
2.1日の働き方の中で休憩スペースをどのように利用するかを考える
休憩スペースの計画から導入まで、スムーズに進めるためにはいくつかのポイントがあります。
ひとつは、1日の働き方のなかで、休憩がどのくらいの割合を占めているのかを検討する必要があるでしょう。
1の「休憩スペースを作る目的」とも関連しますが、会社として、休憩・リフレッシュをどのように捉えるのか、議論を展開していくのがよいです。
また、オフィス全体の改装をするとして、執務スペースや会議スペースだけを重点的に考えて、「余ったスペースを休憩スペースにすればよい」という考え方では、うまくいかない(=あまり利用されない休憩スペースになってしまう)ことが多いです。
今、会社のなかで生じている何らかの課題を、休憩スペースを作ることで解決できるのかが、きわめて重要なことです。
3.オフィスを利用する従業員には、プロジェクトの初期段階から移転・改装の目的を周知する
オフィスを利用する従業員には、休憩スペースの作成を含む移転・改装プロジェクトの初期段階から、その目的をしっかり周知しておくことが大切です。
会社として目指す働き方、リチャージ・リフレッシュの仕方、これに期待される効果などを示しましょう。
オフィスの移転・改装は、必ずしも全員にポジティブに捉えられるとは限りません。
ネガティブな感情、何らかの不安・疑問を抱える従業員もいるので、そうしたネガティブ要素(不安・疑問)をできるだけ払拭するためにも、目的の周知が必要です。
オフィスの移転・改装において多くの従業員の方が気になる点は、「自分の身の回りがどう変化するのか」です。
例えば
- 自席のデスクのサイズはどれくらいの大きさになるのか
- 自分の部署の隣には、どの部署がくるのか
- 自分が使うワゴンやロッカー、書庫など収納はどうなるのか
など、新しいスペースで働くイメージが付くかどうかがポイントとなります。
併せて、
- 休憩スペースは用意されるのか
- 過ごしやすい休憩スペースになるのか
といった、休憩スペースについても気になる方は多いでしょう。
休憩スペースをはじめ、オフィス移転・改装によって何を叶えようとしているのかといった目的を共有することで、オフィスの移転・改装に、期待感を持ってもらいましょう。
4.どういった空間、どういった家具を配置するのがよいかは、休憩スペースの目的によって大きく異なることを知っておく
休憩スペースをどのような空間にするのがよいか、どのような家具を配置するのがよいかは、企業によって(=休憩スペースの目的によって)、異なります。
一概に「こういう空間がよい」「こういう家具を配置すればよい」とは言えません。
例えば、「ゆったり休みたい」という目的の休憩スペースなら、空間の「光をどのようにするか?」「音はどのようにするか?」という話から、プロジェクトを進めていくことになります。
また、「人と人との交流を促したい」という目的の休憩スペースなら、会話がしやすい空間づくりから、「少人数でミーティングできるようなテーブルを配置するべきか?」という話になります。
5.活用されにくい休憩スペースが生まれてしまう原因を押さえておく
休憩スペースをどういう用途で使ってほしいのかと、実際の使われ方がマッチしていないと、せっかく作ったのにあまり活用されない休憩スペースになってしまいます。
また、そもそも休憩スペースを作る目的がしっかり従業員に周知されていない場合、状況によっては従業員は休憩スペースを使う目的が分からず、結局休憩スペースを使わないという事態も起こります。
例えば1人でゆっくりとくつろごうとしている従業員にとっては、コミュニケーションをとるための工夫がある休憩スペースは、居心地が悪いでしょう。
反対に、普段接しない他部署の方とコミュニケーションをとるきっかけを求めている従業員にとっては、しんとした空間は話がしづらいでしょう。
従業員がその休憩スペースの目的と役割を理解することで、自身の休憩時間をより効果的に活用し、さらに働きやすい環境の整備に繋がります。
インナーブランディング(※1)と重なる部分でもあるのですが、「会社としてこういう考え方があり、このように使ってほしいから、このようなレイアウトにしました」ということや、「新しいカルチャーにはなるが、このような使い方をしていっても構わない」ということを、伝えていく必要があります。
そのためには空間を設けるだけではなく、福利厚生の調整も必要かもしれません。
※1 インナーブランディングとは?
インナーブランディングとは、自社の企業理念やブランド価値を従業員に伝えて、浸透させる活動の総称です。
ちなみに、コーヒーメーカーの設置などひと工夫で、活用されにくい休憩スペースから、活用される休憩スペースに変わることもあります。
先述したインナーブランディングについては、メリットやデメリットなどの解説を別の記事で行っているので、詳しく知りたい人は下記リンクからご覧ください。
→ インナーブランディングとは?メリットやデメリット、実施タイミングや施策例についてご紹介
豆知識:休養に関する法律「労働安全衛生規則」
次に、休憩スペースに関しての法律にはどのようなものが設けられているかをご紹介します。
オフィスに関連するものとしては、次の内容が挙げられます。
(休憩設備)
第六百十三条 事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。
(休養室等)
第六百十八条 事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者が床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
参照元:中央労働災害防止協会安全衛生情報センター
休養室とは、体調が悪くなった従業員のために、人目から離れて休める場所・病院に行くまで待機できる場所を指します。
オフィスの休憩スペースを業者に依頼する際の注意点
オフィスの休憩スペースを作る目的をしっかり決めていないと、業者に頼んでも良い休憩スペースはできあがりません。
業者ときちんとコミュニケーションをとり、自分たちの休憩スペースの目的を齟齬なく共有しましょう。
また、休憩スペースの目的がうまく決められないといった場合は、目的を決める段階から相談ができる業者を探すこともよいでしょう。
業者探しをするにあたっても、「自分たちの持っている目的に対し、しっかり耳を傾けてくれそうか」を最重要視するとよいです。
上記の他にも、
- 企業理念や事業内容、社風に配慮した提案内容か
- 「働きやすさ」を考慮した提案内容か
- 予算に見合った提案内容か
といった基礎的な視点と、業者の担当営業の熱意や、「最後まで寄り添ってついてきてくれる会社かどうか?」という視点をもって、業者を比較・検討してみましょう。
また、業者のWebサイトの実績ページなどを見て、「経験豊富な業者であるか?」を見極めることも大事です。
経験豊富な業者に依頼することで、
- 計画の遅れ
- 予算の超過
- できあがったオフィスの問題(品質・法律面・使い勝手)
- アフターメンテナンスの問題
といった心配事を、避けることができます。
まとめ
以上、
- なぜオフィスに休憩スペースを作るのか
- オフィスの休憩スペースを検討する際に発生する懸念
- オフィスの休憩スペース3事例
- オフィスの休憩スペースを作る際のポイント5選
- 豆知識:救護室に関する法律「労働安全衛生法」
- オフィスの休憩スペースを業者に依頼する際の注意点
について、ご紹介しました。
まずは、“自社にとっての”オフィスの休憩スペースの目的・役割を明らかにすることが大事です。
オフィス内の余った場所を何となく休めそうなスペースとして割り当てるだけでは、従業員はうまく活用してくれません。
そして、「こういう思いがあって、このように使ってほしいからオフィスを改装・移転するのだ」ということは、プロジェクトの初期から従業員に伝えるようにしましょう。
会社の理想とするリフレッシュの形と、従業員が実際に取るリフレッシュの形が一致すれば、生産性のアップや人材確保など、さまざまなメリットを得られます。
オリバーでは、オフィス移転・改装のプロジェクトを数多く手がけています。
オフィス空間づくりにお困りの際は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
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