フリーアドレスとは?オフィスに導入するとどんな働き方になる?事例とアンケート結果も紹介
フリーアドレスとは、オフィスの中で固定の席を持たずに、自分の好きな場所で働くというワークスタイルのことです。
オフィス移転や改装を担当する担当者の中には、
- フリーアドレスに興味があるが、いまいちイメージがついていない
- フリーアドレスを導入して失敗したら困る
というように、フリーアドレスの導入になかなか踏み切れないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フリーアドレスについて、オフィス移転・改装を手がける株式会社オリバーが解説します。
- フリーアドレスとはなにか?
- フリーアドレスを導入すると、どんな働き方やシーンが生まれるのか?
- 固定席との比較 フリーアドレスを導入するメリット・デメリット
- フリーアドレスを導入した事例と導入後のアンケート結果・利用者の声
- フリーアドレスが定着しやすい企業・部署と、定着しにくい企業・部署
- フリーアドレス導入をためらう理由
- フリーアドレスを定着させ、成功するためのコツ8選
について、詳しく解説します。
フリーアドレスとはなにか?
フリーアドレスとは、オフィスの中で固定席を持たずに、自由に席を選んで働くワークスタイルのことです。
固定席では、組織に合わせてレイアウトを行い、全員に1人1台専用のデスクを用意しますが、フリーアドレスでは個人専用のデスクを設けず、皆で共有することになります。
また、フリーアドレスの中にも
- フリーアドレスデスク型
- ABW型
という2つのレイアウト方法があります。
2つの違いについて、次に解説します。
フリーアドレスデスク型とは?
「フリーアドレスデスク型」は、省コスト&省スペースに対応したレイアウトです。
例えば日中は営業社員が外出して席が空いていることが多いなど、「全員分のデスクを用意しても空席ばかりで勿体ない…」といった背景から始まったレイアウト方法です。
自分の席と呼べるような個人専用のデスクは設けず、皆でデスクを共有して利用する働き方となります。
コミュニケーションを活性化させやすい特徴があります。
また人数分のデスクを用意せず共有で利用することで、人員の増減への対応がしやすく、一定数のデスクの用意で済むため、省コスト・省スペースが期待できます。
ABW型とは?
「ABW型」は、画一的でないフレキシブルなレイアウトです。
ABWは、Activity Based Workingの略で、活動(働くシーン)に応じた環境で仕事をするスタイルのことで、自由な働き方を推奨するスタイルとなります。
オフィス内には執務デスクだけでなく、ミーティングテーブル、ソファ、集中ブースなど様々な種類の働く場が用意され、各個人が自分の業務に合う場所を選択できる働き方です。
「フリーアドレスデスク型」も「ABW型」も、フリーアドレスと呼ばれるレイアウトですが、個人の自由度に違いがあります。
以下は、「固定型」「フリーアドレスデスク型」「ABW型」の違いをまとめたものです。
固定型 | フリーアドレスデスク型 | ABW型 | |
場所の選択肢 | 執務デスク、会議室 | 執務デスク、ミーティングテーブル、会議室 | 執務デスク、ミーティングテーブル、スタンディングデスク、 集中ブース、会議室など |
コスト・効率性 | △ | 〇 | 〇 |
組織の自由度 | △ | 〇 | 〇 |
個人の自由度 | △ | △ | 〇 |
働くスタイルの自由度 | △ | △ | 〇 |
「フリーアドレスデスク型」と「ABW型」の場所の選択肢の大きな違いは、執務デスク以外に、集中ブースや会議室以外のコミュニケーションスペースがあるかどうかです。
「ABW型」のほうが、より働き方の選択肢が増えるレイアウトです。
昨今では、オンライン会議が浸透したことで、集中ブースや一人で仕事ができるエリアなど、ABW型の需要が増えてきています。
企業によって適した形は異なるため、「フリーアドレスデスク型」と「ABW型」のどちらがオフィスとして良いのかは一概には言えません。
フリーアドレス導入を検討している企業は増加傾向
オリバーのお客さまでは
- 社員満足度を上げたい
- コミュニケーションを増やしたい
- 新しい取り組みをしていきたい
と考える企業さまが徐々に増えてきており、「フリーアドレスを導入したい」といった声は近年特に増えてきています。
コロナ禍を経て、リモートワークの増加もあり、新たに生まれた課題や働き方に関する関心度が高まっているため、今までフリーアドレスに関心がなかった企業さまも関心を持たれていると考えられます。
これまでは「オフィスは固定席で、各自の個人専用のデスクがあるべきだ」という考え方が一般的でしたが、そういった考え方に変化が現れてきています。
フリーアドレスを導入すると、どんな働き方やシーンが生まれるのか?
ではフリーアドレスを導入すると、どういった変化が生じるのでしょうか?
働き方や、働く際のシーンのご紹介とともに解説します。
フリーアドレス導入に踏み切った企業が抱えていた問題
固定席からフリーアドレスに踏み切る理由で、一番多いものは「コミュニケーションを取れるようにしたい」という課題です。
また、
- 全て固定席にすると部屋が窮屈である
- 外出率が高いため、スペースに余裕を持たせたい
= デスクを共有で利用することで、空いたスペースを有効活用したい
といったスペースに対する課題も理由として挙げる企業さまも多くおられます。
ABW型フリーアドレス導入で生まれる働き方、シーン
フリーアドレスを導入すると、固定席にはない多様な働き方が生まれます。
人数
1人/2人/3人/5人/10人以上
×
集中/コミュニケーション
完全集中/半集中/コミュニケーション/休憩やリラックス
×
コミュニケーション時間
さっと集まってさっと解散/長時間話し合う/コミュニケーションをしない
上記のように、人数、集中/コミュニケーション、コミュニケーション時間、の掛け合わせの数だけ、シーンは生まれます。
具体的には、
- 仕事について初めてのことが分らなくて困っていたら、隣に座っていた他部署の人が経験あると教えてくれた
- 今まで他部署の人がどんな仕事をしているのか知らなかったけど、フリーアドレスで交流が増えて会社でどんな仕事をしているのか知るきっかけができた
- 集中したい時に集中ブースに入ることによって、作業を中断されることが減り、よりスムーズに業務ができるようになった。
- ちょっとした報告や相談をしたいときに、近くのハイテーブルでショートミーティングができるようになった
- コミュニケーションゾーンで何気ない雑談で盛り上がっていたら、新しいヒントや考え方を知ることができ、新たなアイデアとして仕事に繋がった
といったシーンが発生する可能性があります。
ABW型フリーアドレスで多くのシーンが生まれる理由は、デスクや席に様々な種類を用意し、コミュニケーションを誘発するための仕掛けを作ることができるためです。
オリバーの考える、フリーアドレスに対応したオフィス作りに関してはこちらをご確認ください。
固定席との比較 フリーアドレスを導入するメリット・デメリット
次に、固定席と比較して、フリーアドレス導入には、どのようなメリット・デメリットがあるのかをご紹介します。
フリーアドレスを導入するメリット
- 席が固定されないため、増員が発生した際も都度デスクを購入する必要がない
- 増員や減員があった際、都度レイアウト変更をする必要がない
- 全員分デスクを用意する必要がなく、スペースを有効活用できる。座席以外の機能にスペースを使うことができる
- 一人ひとりが好きな場所を選択することができる
効率的なスペース利用や、一人ひとりにあったスペースを選択できるといったことが、フリーアドレスのメリットとして挙げられます。
フリーアドレスを導入するデメリット
次に、フリーアドレスのデメリットをご紹介します。
それぞれのデメリットは、オフィス設計時の工夫によって解決できる場合も多くあります。
- 誰がどこの席にいるのかが分かりづらい
→ チャットや電話、ICTツールなどを用いて解消 - 席のすぐ近くにたくさんの書類を置くことができない
→ ペーパーレス化やオフィスの美化には繋がるが、業務的に難しい部署や個人によっては、固定席を設ける必要がある - 毎朝どの席に座るか考えるひと手間が発生する
→ フリーアドレスを導入する意図をしっかり説明する必要がある - 人気の席に偏りが出る場合がある
→ 計画不足によって発生するため、しっかりとした計画をもとに設計する必要がある
上記のようなデメリットを解消する工夫は後述します。
フリーアドレスを導入した事例と導入後のアンケート結果・利用者の声
オリバーでは、様々な業種・規模のフリーアドレスを導入したオフィスをデザインしてきました。
その中から、3つのオフィスと導入後のアンケート結果をご紹介します。
- 株式会社水田製作所 様 本社|業種:電子・電気機器向け受託設計及び製造
- オリバー大阪オフィス(自社オフィス)
- オリバー東京日本橋オフィス(自社オフィス)
1.株式会社水田製作所 様 本社|業種:電子・電気機器向け受託設計及び製造
オリバーのお客さまの事例をご紹介します。
「業務効率の向上」「他部門との交流」などを期待している社員さまが多いことから、フリーアドレス化やABWを取り入れたオフィスに刷新したいというご要望をいただきました。
その日の仕事内容や気分に合わせて場所が選べるように、ラウンジエリアから個室ブースまで多様な種類のスペースをご用意しました。
ショールームを含め全面的にノートPCでの作業が可能な空間としました。
改装前のオフィスは、固定席で部署毎にデスクや区画が分かれているレイアウトでしたが、改装によりオープンスペースのフリー席で働くスタイルへ変化しました。
利用社員さまの声
コミュニケーションの活性化だけでなく、働きやすさに対しても効果があるという回答がありました。
コミュニケーション
- 席が自由になったことで、部署外の社員とのコミュニケーションが取りやすくなった
- 以前より、自分も含めコミュニケーションが増えている
- 固定席ではあまり話ができなかった方とも話す機会が増えた
- 「少し話す場所」が多くあるので、話しかけやすくなった
- 椅子・ソファの空いているところが多くあるので、話しやすくなった
働きやすさ
- 落ち着いた空間で仕事に取り組める
- 席が毎日違うので気分転換になる
- 気分によって立って仕事ができる
- フリーアドレス化によって整理整頓の意識が向上した
クライアント情報
企業名:株式会社水田製作所 様 本社
所在地:兵庫県明石市
業種:電子・電気機器向け受託設計及び製造
面積:116坪(改装範囲)
従業員数:16~17名 25席以上必要
概要:本社 改装工事(自社ビル)
2.オリバー大阪オフィス(自社オフィス)
オフィスは賃貸オフィスで、2021年に改装しました。
在宅勤務の社員や外出する人数を算出し、出社率70%を想定し計画しています。
そのため固定席はなく、全席フリー席としています。
カフェカウンター、ベンチ席、ソファ席、集中ブース、ワークデスク等さまざまな過ごし方ができる家具が配置されており、自分の業務内容や働き方に合わせて自由に席を選択することができます。
アンケート結果:33名が回答
業務に対する認識の変化について、アンケート結果をご紹介します。
- 改装前に比べて、働く意欲が高まりましたか?
79%が「とても高まった、高まった」と回答 - 改装前に比べて、生産性が向上したと感じますか?
73%が「とても感じる、感じる」と回答 - 固定席だった頃に比べて、フリー席で働く働き方に満足していますか?
84%が「とても満足している、満足している」と回答 - 改装前に比べて、部署内でのコミュニケーションは活発になりましたか?
39%が「とても活発になった、活発になった」と回答
58%が「変わらない」と回答 - 改装前に比べて、他の部署とのコミュニケーションは活発になりましたか?
73%が「とても活発になった、活発になった」と回答
7~8割の社員が、働く意欲向上だけでなく、生産性が向上したと感じています。
そしてコミュニケーションが部署内だけでなく、部署外の社員とも活発になったと感じています。
次に、毎日の席の選び方についてのアンケート結果をご紹介します。
毎日の席の選び方で当てはまるものはどれですか?
人数 | 割合 | |
毎日違う席を選ぶ | 1人 | 3% |
だいたい違う席を選ぶ | 9人 | 27% |
だいたい決まった席を選ぶ | 21人 | 64% |
いつも決まった席を選ぶ | 1人 | 3% |
固定・出社しない | 1人 | 3% |
「だいたい決まった席を選ぶ」という割合が最も多くなりましたが、「毎日違う席を選ぶ、だいたい違う席を選ぶ」と回答した社員も3割いることが分かりました。
フリーアドレス制を活用し、業務内容や働き方に合わせて自由に席を選んでいる社員も一定数いると言えるでしょう。
フリーアドレスの効果に関しては、次のような回答がありました。
フリーアドレスの効果として実感していることがありますか?(複数選択可)
- 仕事上関係がない人とのコミュニケーションが増える
17人 - 仕事上関係がある人とのコミュニケーションが増える
11人 - 部門の壁が低くなる
11人 - ペーパーレス化が増える
11人 - 集中できる
10人 - 仕事の効率があがる
8人 - モチベーションがあがる
6人
多くの社員がフリーアドレスの効果として、コミュニケーションの増加を挙げています。
また、仕事の効率があがったり、モチベーションがあがるといった、生産性向上につながると感じている社員も複数いることが分かりました。
利用社員の声
次に、オフィスを利用している社員の声をご紹介します。
コミュニケーションの活性化だけでなく、働きやすさやモチベーションアップに対しても効果があるという回答がありました。
コミュニケーション
- 毎日違う人と席が隣になるため、話をする人が増えた
- 他の部署の人とのコミュニケーションを生む仕掛けが効いている
- 他の部署の人と席が隣になると、自然に会話がはじまる
- 他の部署の人に、以前より話しかけやすいオフィス環境になった
席の選択肢
- その日の体調や気持ちで席が選べるので気持ちの面で楽になった。気分転換になってよい。固定席は常に気が張る。
- その日の作業内容に合わせて席を変えるようになった
働きやすさ・モチベーション
- 街中にお洒落なシェアオフィスをよく見かけるようになったが、そのような空間が事務所で実現できているのは理想的
- 固定席は、多少息詰まり感や監視を感じることが多かったため、フリーアドレスは働きやすい
- 雰囲気がよいので、会社に行きたくなる
- 自信をもってお客さまに来社いただける
その他
- 印刷物を自然と必要以上に行わなくなった
- 以前より整頓することに意識をするようになった
- 身だしなみを気を付けるようになった
オフィス情報
所在地:大阪府大阪市中央区今橋4-3-18 HK今橋ビル1F
面積:106坪
オフィス利用人数:40名
総席数:71席
概要:大阪支社 改装工事(テナントビル)
3.オリバー東京日本橋オフィス(自社オフィス)
オフィスは元のテナントからの移転で、2022年に竣工した賃貸オフィスです。
様々な部門の社員が入れ替わりで利用することを想定したオフィスで、在宅勤務の社員や外出する人数を算出し、出社率50%を想定し計画しました。
そのため固定席はなく、全席フリー席としています。
カフェカウンター、ベンチ席、ソファ席、集中ブース、ワークデスク等さまざまな過ごし方ができる家具が配置されており、自分の業務内容や働き方に合わせて自由に席を選択することができます。
アンケート結果:37名が回答
業務に対する認識の変化についてのアンケート結果をご紹介します。
- 改装前に比べて、他の部署とのコミュニケーションは活発になりましたか?
70%が「とても向上した、向上した」と回答 - 雑談や何気ない会話から、業務に関するヒントを得た経験はありますか?
78%が「とてもある、ある」と回答
こちらのオフィスにおいても7割以上の社員がコミュニケーションが活発化し、業務に活かせていると回答しました。
利用社員の声
次に、オフィスを利用している社員の声をご紹介します。
コミュニケーションの活性化だけでなく、働きやすさに対しても効果があるという回答がありました。
コミュニケーション
- 堅苦しくない雰囲気なので、気軽なコミュニケーションが取れるようになった
- シームレスなレイアウトにより、人とのコミュニケーションがとりやすくなった
- 座席ごとに話かけやすさが異なるので、話しかけていいタイミングかどうかの判断材料になる
- 年次の若い社員とコミュニケーションが取りやすくなった
働きやすさ
- オフィス空間がカジュアルなことで緊張感が緩和された
- 色々なスペースがあるので、動きが出て非常によい
- カフェ等の延長線上にオフィスがあるように感じ、無機質なオフィスよりモチベーションが上がる
オフィス情報
所在地:東京都中央区日本橋室町1-7-1 スルガビル9F
面積:180坪
オフィス利用人数:50名
総席数:108席
概要:東京本社 移転工事(テナントビル)
フリーアドレスが定着しやすい企業・部署と、定着しにくい企業・部署
フリーアドレスが定着しやすい企業・部署と、定着しにくい企業・部署にはそれぞれ特徴があります。
フリーアドレスが定着しやすい企業・部署
- 他部署とのコミュニケーション不足を課題としている
- 外出が多い部署があり、固定席ではスペースの有効活用ができていない
- 在宅勤務を導入している(ノートパソコンやネットワークのハードルを既に越えている)
- 紙の書類が少なく、多くの書類がペーパーレス化できている
フリーアドレスが定着しにくい企業・部署
- コミュニケーションの必要を感じていない
- 外出する部署があまりなく、デスクで行う固定的な業務が大半を占めている
- ノートパソコンの導入ができない
- 固定電話での業務が多い
- 業務において、移動させられない機器等を使用する
- 他の社員に見せられない重要書類を多く扱う
以上のように、フリーアドレスはどのような企業にも適しているわけではありません。
なお、企業や部署の人数規模によるフリーアドレスの定着のしやすさは、これまでオリバーが手がけたお客さまの実績を踏まえると、関係性はないと言えます。
フリーアドレス導入をためらう理由
フリーアドレスが定着しやすい特徴があっても、フリーアドレス導入をためらう企業には、どういった理由があるのでしょうか。
マネージャーと一般社員の方、それぞれの理由をご紹介します。
マネージャーの方が、フリーアドレス導入をためらう理由
- 誰がどこに座っているか、わからないのではないか
- 誰が何をしているか、わからないのではないか
- いつ出社していつ退勤するのか、わからないのではないか
- 部下が困っていることに、気づかないのではないか
- 顧客対応の様子がそばで見えないため、問題に気づきにくいのではないか
一般社員の方が、フリーアドレス導入をためらう理由
- 資料が片づかないのではないか、片づけるのが大変なのではないか
- 固定電話がないと不便ではないか
- 慣れた環境と変わることで、想像のできない不便があるのではないか
以上のようなためらう理由が挙げられます。
ただし、在宅勤務の普及に伴って、そういったためらいの声は減ってきています。
もちろん、こういった懸念は工夫により払拭できる場合もあります。
マネージャーの方がもつ理由に対しては、
- チャットツール
- フロアの着席状況が分かるシステム(見渡して把握できるオフィスであればそれも不要)
といったものを導入することで解消できることも多いと考えられます。
また、部下との信頼関係を高め、マネジメント方法を再考することも効果的と考えられます。
一般社員の方がもつ理由に対しては、
- フリーアドレスを導入する部署と導入しない部署を決める
- 収納の適切なレイアウトを計画する
- 固定電話をやめ、携帯電話に変更する
- 実施前にルールや意義を共有して漠然とした不安を払拭する
といった、ルールやデバイスなどの工夫で対処できる場合があります。
フリーアドレスを定着させ、成功するためのコツ8選
最後に、フリーアドレスを導入された企業さまが、フリーアドレスを定着させ導入に成功するためのコツを8つご紹介します。
- 事前に社内に対して意識調査を実施する
- フリーアドレスは、全席導入しなくてもよい
- 将来の拡張性や席のバリエーションなど、しっかり計画された設計をおこなう
- フリーアドレスに対応できる環境(ツール・設備)を先に導入しておく
- 収納計画を綿密におこなう
- 竣工時にルール説明会を実施する
- いつも同じ席に座ることはかならずしも問題ではない。コミュニケーションや生産性に着目する
- フリーアドレスの導入目的をちゃんと理解し、提案に落とし込んでくれる業者に依頼する
1.事前に社内に対して意識調査を実施する
フリーアドレスが適しているかどうかは、ヒアリングや調査を入念に行った上で判断することが大切です。
オリバーでは
- 実際の働き方のヒアリング
- 社員数に対する出社率の調査
- 設備環境の確認
- 社員への意識調査
といったヒアリングや調査を実施したうえで、フリーアドレスを提案しています。
ヒアリングは移転・改装プロジェクトの担当者だけでなく、経営者や様々な立場の方に対して実施することがポイントです。
また、ヒアリング・調査によってどんなにフリーアドレスが定着しやすい企業であったとしても、導入を全く考えていない企業には導入しないことが重要です。
- フリーアドレスの導入を迷っている
- フリーアドレスを実施してみたいと思っている
という場合であれば、ヒアリングや調査を実施してみるのがよいでしょう。
2.フリーアドレスは、全席導入しなくてもよい
フリーアドレスを導入する場合、必ずしもすべての席をフリーアドレスにしなくても問題ありません。
- 全席フリーアドレス
- 全席固定席
といったどちらかに揃える必要はなく、
- 一部をフリーアドレス
- 一部を固定席
といった導入の仕方も一般的です。
フリーアドレス席と固定席の割合は、企業によってまちまちです。
固定席のメリットは、
- 部署内でのコミュニケーションがすぐにできる
- 特殊な業務に特化した席の設定ができる(通常より広いデスクや、専用のハイスペックPCの設置など)
- 紙の資料などをたくさん手元に置いておくことができる
といったことが挙げられ、固定席に該当する部署やその人数を把握したうえで、フリーアドレスにする席数を決定します。
- 全体の2割である外出の多い部署だけフリーアドレス
- 大半がフリーアドレスで、一部のみ固定席
というように一部のみフリーアドレス、大半をフリーアドレスというように決めることもあります。
自社にあった割合でフリーアドレスを導入することが大切です。
3.将来の拡張性や席のバリエーションなど、しっかり計画された設計をおこなう
フリーアドレス導入で失敗しやすいポイントに
- 将来の増員、将来の出社率を考えられていない
- 使われない席が発生する
といったものが挙げられます。
フリーアドレスのメリットには、増員によって席数を都度増やさなくてよいというものが挙げられますが、予定されている増員に対応できない計画では、問題があります。
将来の増員や将来の出社率を踏まえた席数を確保することが重要です。
また、席のバリエーションが少ない場合や一部の席に魅力が無い場合、使用されない席が発生することもあります。
先述の働き方のシーンを想定し、様々なシーンに対応できる幅広いバリエーションの席を用意しておくことで、そういった問題が発生しないようにします。
そのためには業務の内容をしっかりヒアリングしたうえで、設計を進めることが大切です。
4.フリーアドレスに対応できる環境(ツール・設備)を先に導入しておく
フリーアドレスに対応できる環境があるかどうかを見分ける方法として、「在宅勤務できる環境かどうか」を判断軸にする方法があります。
制度に着目するのではなく、ツールや設備などの環境があるかないかという視点で判断します。
例えば
- デスクトップパソコンではなく、ノートパソコンを導入しているか
- 無線LANを導入しているか
- 社外とのやり取りを固定電話でなく、携帯電話を利用しているか。携帯電話への転送ができるようになっているか。
- 社内とのやり取りを対面や内線電話、メールだけでなく、チャットツールを利用しているか
- ペーパーレス化ができているか
といった点が挙げられます。
これらの環境は在宅勤務の際も役立ちますが、フリーアドレスにもそのまま活かすことができる環境です。
これらのツールや設備を導入していない場合は、それらを導入できそうかどうかも検討してみることで、フリーアドレスが導入できそうかを判断することができます。
もちろん、導入が難しい部署があればその部署は固定席にするなど、部署や役割によってフリーアドレスと固定席を使い分けることもポイントです。
5.収納計画を綿密におこなう
フリーアドレスを導入した際、「荷物はどうやって保管するのだろう」と気になる方もおられます。
荷物は大きく分けて次の3種類に分けられます。
- 社員が通勤等で使用する個人の物(カバンや上着など)
- 社員が個人で保管する物(ブランケットやマグカップなど)
- 社内で共有して使用する物
①社員が通勤等で使用する個人の物は、個人ロッカーを用意し、出勤時にしまうことになります。
特にABWを導入したい場合は、カバン等が入るロッカーをしっかりと用意することが重要です。
ロッカーを用意せず、カバンやコートなどを常に持ち歩くことになると、身軽さがなくなり業務に合わせて自由に席を動けるというメリットが減ってしまいます。
②社員が個人で保管する物は、同じく個人ロッカーにしまっておき、出勤時や必要な際に取り出して使用します。
固定席では、各自のデスク下にキャビネットが用意され、そこに業務で使う物は片づけることができますが、フリーアドレスを導入する際は、キャビネットは用意しません。
すべて個人ロッカーにしまっておくことになります。
③社内で共有して使用する物は、共有のラックや書庫にしまうことになります。
収納スペースは可能な限りコンパクトにすることでスペースの有効活用が実現できます。
そのためには、物を減らす取り組みが必要です。
例えばフリーアドレス導入前まで、業務マニュアルや製品カタログなどを各自で保管するルールになっていた場合は、カタログを社内で共有するなど、個人で使用する物を減らす必要があります。
文具などもペーパーレス化を進めることで使用頻度を下げることができ、社内で共有しても支障が起こりにくくなります。
ゴミ箱も各席に用意するのではなく、共用のゴミ箱を用意することになります。
共有化は一見手間が増え非効率に映りますが、共有化することによってコミュニケーションを生み出す仕掛けにすることができます。
詳しくは以下のコラムを参考にしてください。
→ コミュニケーションが生まれるオフィス空間に必要なポイント|事例&アンケート
以上のように、物を減らす取り組みをしたうえで、必要な収納量を決定します。
さらにそれらの物がどこで使われるかを判断し、適切にオフィス内に配置していくこととなります。
6.竣工時にルール説明会を実施する
新しいオフィスが完成する際には、新しいルールを設定することも多いため、ルール説明会を開催することをおすすめします。
特にフリーアドレス導入を初めて実施する場合は、オフィスの使い方だけでなく、働き方が大きく変化するため、社内に向けてしっかりと説明することが重要です。
- 今回のオフィス移転・改装の目的
- 新しいオフィスのコンセプト(なぜこういったオフィスになったのか)
- 新しい働き方についての意図や解説
- 新しいツールや設備などの説明。ペーパーレス化する際はどの導入開始期限なども
- 会議室や収納などの使い方
といった内容について解説し、利用する社員がちゃんと理解してから利用開始することが重要です。
7.いつも同じ席に座ることは必ずしも問題ではない。コミュニケーションや生産性に着目する
フリーアドレスを導入する際、「いつも同じ席に座らない」といったルールを設定する企業もありますが、オリバーは同じ席に座ることは必ずしも問題ではないと考えます。
フリーアドレスを導入する目的が、他部署の人とのコミュニケーションを促進する場合であれば、同じ席に座り続けることは問題となる場合もあります。
しかしそういった目的ではなく、例えば個人の生産性を高めることが目的であれば、その人が一番仕事がしやすい場所で業務することが重要となります。
人によっては、同じ席に毎日座ることで効率的な仕事ができる場合もあれば、シーンによって使い分けることで効率的な仕事ができる場合もあります。
目的に沿った使われ方をされているかに着目することが大切です。
8.フリーアドレスの導入目的をちゃんと理解し、提案に落とし込んでくれる業者に依頼する
フリーアドレスは、運用ルールであるため、基本は社内にて調整し決定するものです。
しかし導入したことがない企業にとっては、わからないこともたくさんあるのではないでしょうか。
そういった際に、疑問や悩みに対してしっかりと親身にアドバイスをしてくれる業者かどうかは、重要なポイントです。
例えば
- 紙の資料を減らすための取り組み
- DXを推し進めること
- 社員に対する説明
などを丁寧に進める必要がありますが、その際の疑問や悩みに対してちゃんとケアしてくれるような業者を選ぶことが大切です。
現在では、多くの業者がフリーアドレスのオフィスを手がけた実績を持っています。
フリーアドレスのオフィスの実績を持っている業者に相談することは重要ですが、それだけではありません。
今回のフリーアドレス導入の目的をちゃんと理解し、その目的を達成できる提案内容になっているかが重要です。
また、特徴に違いのある企業いくつかに声がけし、各社違ったアイデア、方向性を示してもらい、その幅広い案の中から比較検討して選ぶこともおすすめです。
まとめ
以上、オフィス移転・改修を手がける株式会社オリバーの視点から、
- フリーアドレスとはなにか?
- フリーアドレスを導入すると、どんな働き方やシーンが生まれるのか?
- 固定席との比較 フリーアドレスを導入するメリット・デメリット
- フリーアドレスを導入した事例と導入後のアンケート結果・利用者の声
- フリーアドレスが定着しやすい企業・部署と、定着しにくい企業・部署
- フリーアドレス導入に躊躇する理由
- フリーアドレスを定着させ、成功するためのコツ8選
についてご紹介しました。
フリーアドレスは
- コミュニケーションが活性化する
- 働きやすさやモチベーションが向上する
といった効果を生み出し、ひいては生産性向上にも貢献します。
今回のコラムをフリーアドレスを導入するべきかどうかの判断材料として、活用ください。
オリバーでは、フリーアドレスを導入したオフィス移転・改装のプロジェクトを数多く手がけています。
オフィス空間づくりにお困りの際は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
オフィスブランドPLACE2.5では、お客さまのビジョンを実現する、唯一無二のオフィス設計を行っています。
また当社では自社オフィスのオフィス見学を実施しています。
今回ご紹介したオリバーのオフィスは全て見学していただくことができます。
詳しくは以下のページをご覧ください。